第6話 地獄の鉄人レース 衆合(しゅごう)トライアスロン大会!
女王・宋帝王の「ブヒブヒ・クイズ」を精神的ボロボロ状態で突破した魁斗とミオ。次に二人の前に現れたのは、競技だった。
「……おいミオ。あの横断幕、なんて書いてある?」
魁斗が指差した先には、罪人の血で書かれたようなおどろおどろしい文字でこうあった。
『第一回 衆合地獄杯・ 地獄の鉄人トライアスロン ~死ぬまでが準備運動~』
「 地獄の鉄人トライアスロン!? 地獄で運動会でもやろうっていうの!?」
ミオのツッコミと同時に、巨大な銅鑼の音が響き渡った。
【圧殺・アイアンマウンテン】
「はい、スタートぉ!! 止まったら即・煎餅よ!!」
背後から巨大な鬼が、二つの鉄の山を台車のように押し進めてくる。
「うわあああ! 近い、近い!! 物理的に隙間がないって!!」
魁斗の目の前で、二つの鉄の山がガッシーン!!と凄まじい音を立てて合体した。
「……おい、前の罪人がペラペラの『しおり』みたいになったぞ!?」
「魁斗! 右アームで山を押し返して! 筋トレだと思って頑張って!!」
魁斗は右腕の黒いノイズを全開にし、迫りくる鉄山の壁を両手で支える。
「重すぎだろ! これ何トンあんだよ! 背骨がバグの重圧でマカロンみたいに潰れるぅぅ!!」
ノイズが火花を散らし、魁斗はプレス機の中を逆走するハムスターのように爆走した。
【赤銅スイミング】
山のゾーンを抜けた先に待っていたのは、ドロドロに煮えたぎる赤銅の川。
「はい次、泳いで! 制限時間は皮が溶けきるまでよ!」
審判の鬼が、魁斗の尻を熱い鉄棒で突っつく。
「熱っ! 熱いっていうか、これ液体金属じゃねーか! 浮力仕事して! 沈む! 俺がター○ネーターみたいに沈んでいく!!」
ドッボォォォォン!と飛び込んだ魁斗だったが、赤銅の川は粘り気が凄まじく、一掻きするごとに幽体の腕がこんがり焼ける。
「魁斗、バタ足よ! バタ足で熱を散らして!! ……って、私も熱いじゃない! 私、青い炎なのに、赤銅に染まって紫色の変な火の玉になっちゃうわよ!!」
ミオはミオで、川から飛び出す熱い飛沫に「熱風(熱いツッコミ)」を浴びせながら伴走した。
【岩山クライミング】
「……はぁ、はぁ……。あがっ、ようやく陸地……」
全身が「赤銅コーティング」されてテッカテカになった魁斗。しかし、ゴールのテープは見えない。
目の前には、無数の罪人の手が突き出た絶壁。
「最後はフリークライミングよ! 掴まれる手に噛みつかれないように気を付けてね!」
「どんな競技だよ!!」
魁斗は必死に岩場を登る。登るたびに「……地獄……」「……苦しい……」と呟く罪
人の手を足場にし、ようやく頂上のゴールゲートが見えたその時。
ゲートのど真ん中に、巨大な天秤を抱えた厳格な老人が立ち塞がった。
これこそが死後二十八日目の裁判官、五官王である。
「止まれ、トライアスリートよ。わしは妄語を最も嫌う審判者、五官王なり。……このレース、お前は本当に『全力』で走ったか?」
「……はぁ? 見りゃわかるだろ! 全力どころか、魂の残機削って走ってきたんだよ!」
「ほう……。ならば、その言葉に偽りがないか、この『業秤』にて計らせてもらう。……もし嘘があれば、ゴール直前で失格。スタート地点(鉄の山の下)へ強制送還とする」
「……っ、そんな無慈悲なルールあんのかよ! 審判、買収されてるだろ!!」
五官王が巨大な天秤の皿を差し出す。
「さあ、乗れ。お前の『完走したいという意志』と、わしが用意した『絶望の分銅』……どちらが重いか、地獄の重力に問いかけるがよい」
「魁斗! 気合よ! 嘘じゃなかったら秤は動かないはず!!」
魁斗のテッカテカに焼けた右腕が、再び黒く激しく明滅し始めた。
「……嘘なもんかよ。俺は、生きて帰るって……決めてんだよ!!」
第3関門、クライマックス。五官王の秤が、不純物の「意志」を計測する!




