第5話 女王様の「ブヒブヒ」聴力テスト
「待ちなさいと言ったのが聞こえなかったかしら? この三つ目鬼のデブ」
宋帝王の茨の鞭がしなり、釜茹で寸前の魁斗とミオを掴んでいた鬼の手を弾き飛ばした。
「あべしっ! ……助かった、のか? 命拾いしたけど、助けてくれた人が完全に放送禁止な格好なんだけど!」
魁斗が空中で体勢を立て直し、着地する。
「ちょっと魁斗、見てよあのハイヒール! 地獄の岩場であんなの履くなんて、足首の靭帯がバグってるわよ!!」
ミオのツッコミを無視し、宋帝王は冷徹な笑みを浮かべて魁斗に歩み寄った。
「不純物。お前の罪を量る前に……お前の『本質』を見極めてあげるわ。わしが今から出すクイズに正解できなければ、お前を『特製・黒豚ラード』に加工して、わしの朝食のトーストに塗ってやるわよ」
「朝から重すぎるだろ! 俺のアイデンティティ、油になっちゃうの!?」
【地獄の特別審判 鳴き声当てクイズ】
「いいこと? 今からわしの後ろのカーテンから、三種類の『ブヒ』を聴かせてあげるわ。お前は耳の穴をかっぽじって、どれが本物の豚か当てなさい」
①純粋な豚(イタリア産パルマ産)
②豚みたいな人間(ただの食いしん坊)
③豚人間(邪な性に溺れてバグったハーフ)
「……何だよそのニッチすぎる三択! 誰に需要あんだよ!!」
宋帝王が指を鳴らすと、カーテンの向こうから第一の「ブヒ」が響いた。
【第1問】
『ブヒィィィーッ!!(めちゃくちゃビブラートの効いた高音)』
「はい、魁斗! どっち!? 豚なの!? それともオペラ歌手なの!?」
ミオが横でハラハラしながら実況する。
「……待て。今の鳴き声、微妙に『給料日前のサラリーマンが競馬でスった時』の哀愁が混じってたぞ。……答えは、2番の『豚みたいな人間』だ!」
「――ブッブー。正解は1番の『ただの豚』よ。最近の地獄の豚は、死後のストレスで音域が広がってるの。常識よ」
宋帝王の鞭が魁斗のケツをスパーン!と叩く。
「あがぁぁぁっ!? 音楽性の違いで豚に負けたぁぁぁ!!」
【第2問】
「第二問。聴きなさい」
『……ブヒ。……ブフッ、ブヒヒヒヒ(ねっとりとした、含み笑いのような声)』
「これだ! これこそ3番の『豚人間』だろ! 欲望が煮詰まった、妖怪的な粘り気があるもん!!」
「残念。正解は『ダイエットに失敗して、隠れて夜食のカップ麺を啜っているわしの部下の獄卒』よ。ただの人間(元)だわ」
「知るかよ!! 身内の不祥事をクイズに混ぜるなよ女王様!!」
魁斗の叫びも虚しく、再び鞭が唸る。
【最終問題】
「最後よ。これを外せば、お前は本当にラードよ。……鳴きなさい」
『ブォォォォォン!! ギュララララ!!(もはや爆音のノイズとエンジン音の融合)』
「……は? 今の、鳴き声か? トラクターが脱輪した時の音だろ?」
ミオがポカンと口を開ける。だが、魁斗の右腕の黒いノイズが、その音に激しく共鳴した。
「……分かったぞ。こいつは『豚』でも『人間』でもねえ。……地獄のシステムに適合しすぎて、鳴き声そのものが物理的にバグり散らかした『特級・豚人間(エラー版)』だ!!」
「――正解よ。わしの飼い犬(豚)にしてあげても良かったけれど、合格にしてあげるわ」
宋帝王は満足げに微笑み、城門を開いた。
「面白いエラーね。その『聞き分ける力』……次の衆合地獄で、巨大な鉄の山に押しつぶされる時の骨のきしむ音でも、しっかり聞き分けてあげなさい」
「……もう二度とクイズなんてやらねえからな!!」
全身を「茹でダコ」一歩手前で回避した魁斗と、蛇に巻かれすぎて節々が痛いミオは、女王様の高笑いに見送られながら、さらなるカオスな衆合地獄へと突き進むのだった。




