第4話 黒縄(こくじょう)のマーキング窯茹で上げ
等活地獄を(ケツの尊厳を犠牲にしながら)突破した魁斗とミオが辿り着いたのは、一面が真っ黒な焦土と化した第二の関門、黒縄地獄だった。
「……おい、なんだよここ。等活地獄より静かだけど、空気の重さが尋常じゃねえぞ」
魁斗が身構えた瞬間、地響きと共に巨大な影が二人を飲み込んだ。
そこに立っていたのは、身の丈十数メートル、額に爛々と輝く第三の目を持つ巨大な鬼。その手には、煮えたぎる墨汁をたっぷりと含んだ巨大な「墨縄」が握られている。
「……見つけたぞ。不純なる『下書き』どもめ」
鬼が三つ目を見開いた瞬間、魁斗とミオの体が不可視の力で地面に縫い付けられた。
「ちょっと! 体が動かない! 幽霊の自由度を返してよ!!」
ミオが絶叫する中、鬼は巨大な墨縄をバチンッ!としならせ、魁斗の全身に縦横無尽な黒い線を引き始めた。
「これ……大工が木材に引く印じゃねーか! おい、なんで俺の腹に『ここから切断』みたいな点線が引かれてんだよ!!」
「カカカ! 黒縄地獄の伝統芸よ!」
空中に浮かぶ蓮禅のホログラムが、今度は双眼鏡を覗きながら解説する。
「その墨縄の跡に沿って、鬼が熱鉄の鋸で魂を切り刻むのじゃ。お前の場合、全身がバグだらけだから、もはや千切り(キャベツ)状態じゃな!」
「笑い事か! 料理番組の仕込みみたいにされてたまるか!!」
「仕上げだ。不浄なバグは、一度熱湯で消毒せねばならぬ」
三つ目の鬼は、切り刻む前段階として、魁斗を巨大な地獄の釜へと放り込もうと掴み上げた。中にはグツグツと煮えたぎる、正体不明の暗黒液体。
「あ、あづっっっっっ! まだ入ってねーのに熱気がヤバい! 俺、茹で上がって『魁斗のつみれ』になっちゃう!!」
「魁斗! 頑張って……って無理よね! 私も一緒に掴まれてるし! 私、冷やし幽霊が売りなのに、ホットゴーストになっちゃうわよ!!」
二人が釜の真上に吊るされ、まさにドッボーン!と落とされる寸前。
「待ち切りなさい、この不細工な三つ目。その『不純物』、わしが検品してあげるわ」
鋭い鞭の音が空を裂き、三つ目の鬼の手首を叩いた。
「ギィッ!? 何奴だぁ!!」
「……わしは三七日の審判者、宋帝王。……そこのバカの罪を量る前に、勝手に茹で上げることは許さないわ」
煙の中から現れたのは、漆黒のボンテージに身を包み、茨の鞭を弄ぶ圧倒的なオーラを纏った美女。その姿は、地獄の裁判官というよりは、完全にSM女王様であった。
「な、なんだあの格好……!? 地獄の風紀はどうなってんだよ!!」
魁斗のツッコミが響く中、宋帝王の冷ややかな視線が「茹で上げ寸前」の魁斗を射抜いた。




