表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
特級除霊師 神楽坂 冥は除霊に情け容赦がない  作者: 虫松
WAR Shock対決編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/18

第1話 嵐の前の求婚(プロポーズ)と、消された姉の残響

【特級除霊師 神楽坂 冥 事務所】


平和な午後の静寂は、場違いなほど優雅な「カツン、カツン」という靴音によって破られた。

扉が勢いよく開くと、そこには白スーツを一点の曇りもなく着こなした白城レンが、視界を遮るほどの巨大な高級バラの花束を抱えて立っていた。


「麗しき冥。今日も君の瞳は、新月の夜のように神秘的な引力に満ちているね。……さあ、僕という恒星の周りを回る惑星になる準備はいいかな?」


レンは流れるような動作で膝をつき、バラの山を差し出した。


「結婚しよう。君の強さと僕の知性があれば、この歪んだ世界を論理的に再構築できる」


「死ねば? 断るわ」


冥はポテチの袋に手を突っ込んだまま、視線すら合わせずに即答した。


「……ふっ、相変わらずのゼロ秒回答。だがその拒絶こそが、僕という計算機の闘争心に火をつける……!」


「いいから帰れよナルシスト! 掃除の邪魔なんだよ!」

魁斗がモップを構えて叫ぶが、レンはスッと表情を変え、眼鏡のブリッジを押し上げた。


「……いや。今日は君の拒絶を愉しみに来たわけではない。遊びはここまでだ、冥。……今日は、これだけの用事で済む時ではないからね」


事務所の空気が、一瞬で張り詰める。


レンは視線を、部屋の隅で不機嫌そうに浮遊しているミオに向けた。


「そこに浮いている非論理的な地縛霊……君のことだ。君がなぜ、この事務所に縛られ続けているのか。……その『欠損した数式』の正体が判明したよ」


「……なによ。急に真面目な顔して」


ミオが不審げに目を細める。だが、レンの次の言葉が、彼女の記憶の扉を無理やり抉じ開けた。


「君の姉、ミサのことだ。……彼女は、あの『ソルト』によって、この世界のルールから除外デリートされたんだろう?」


ミオの体が、ノイズのように激しくブレた。


~~~~~~~~~~~~~


■過去の回想


幼いミオと姉のミサの前に現れたのは、白銀の少年・ソルト。

彼は無機質な瞳で二人を眺め、『不純だ』と淡々と告げた。

空間が「消去」の予感に震えた瞬間、姉のミサは、ミオを全力で突き飛ばした。


『ミオ、逃げて!! 後ろを見ちゃダメ!!』


ミサは幼い妹を庇い、自らが盾となってソルトの前に立ちはだかった。


『この子は関係ない! 私をどうにでもしていいから、妹だけは……!』


ミサが必死にソルトへ掴みかかろうとした瞬間、パリン、と世界が割れる音がした。


ミサの体は光の塵となって崩れ、人々の記憶からも、家族の写真からも、彼女の存在そのものが完全に「クリーニング」されたのだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~


「姉のミサは君を逃がすために、自らの存在をソルトに差し出し、君を彼の観測範囲から隠したんだ。……君が成仏できないのは、自分だけが生き残った罪悪感と、姉を消したソルトへの底なしの憎悪が、くさびとなっているからだよ」


「……っ、あああああ!!」


ミオが顔を覆い、絶叫する。その慟哭に呼応するように、事務所の窓ガラスが激しく震えた。


「……なるほどね」


冥が、レンの花束から一輪のバラを抜き取り、手の中で無造作に握りつぶした。


「ミオ、あんたの恨み、私が買い取ってあげるわ。……それで? 用件はそれだけじゃないんでしょ、レン」


レンは頷き、窓の外、黒祓会の不気味な気配が立ち込める街を睨み据えた。


「WAR Shockの幹部二名が、同時に動き出した。……『完全浄化』のソルト。そして、概念すらも殴り砕く『暴力の権化』セイユだ」


「セイユ……。あの、考える前にすべてを壊す男ね。……ソルトとセットで動くなんて、最悪の組み合わせじゃない」


魁斗は、震えるミオの肩にそっと手を置いた。


「……ミオ。あいつに教えてやろうぜ。消されたはずの『ノイズ』が、どれだけ完璧な世界をぶち壊すか。……俺も、一緒に戦う」


レンはシルクハットを直し、冥に向かって不敵に微笑む。


「さあ、冥。結婚式の前撮りは、あの『正解』と『暴力』をドロドロの泥水に沈めてからにしようか」


「死んでも嫌よ。……でも、あの子たちの鼻をへし折るのには賛成だわ」


最強の除霊師、失敗作の兄、復讐の幽霊、そして愛に狂った理論家。

「正解」という名の独裁者たちへの、反撃の幕が上がる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ