廃墟
「こりゃあ、どういうこった? 本当に、ここにお前の言うダルリ村があったのか?」
タルカスは大声を上げてあたりをぐるりと見回した。隣りでパックもぼうぜんとあたりを眺めている。
「なんにもなくなってるね……まるで人がいなくなって百年もたったみたい」
ファングも同意した。
パックの道案内でドーデン王の一行はハランスの町から、パックが最初に目覚めてから立ち寄ったダルリ村へと進路をとったのだったが、いざ行き着いてみると村は完全に廃墟となっている。
村の家々の壁は崩れ、屋根は落ち、生垣は荒れ果てている。なにより人っ子一人見当たらず、村のまわりに広がっていた畑は荒れ地となっていた。
ファングの言うとおり、まるで百年だれも住んでいないようだった。
教授は馬車から降りて厳しい視線であたりを観察していた。
と、教授は声をあげた。
「だれかいるようじゃぞ」
え、とパックは教授の示した方向を見やった。
ひとりの老婆が、ふらふらとさ迷い歩いている。
あれは……。
パックは思い出した。
フライ婆さんである。
村で治癒魔法を使って村人の怪我や、病気を治す仕事をしていた。
パックは老婆に駆け寄った。
「フライお婆さん!」
老婆はぼんやりとした目をあげ、近づいてくるパックに顔をむけた。
「お婆さん、いったいこれはどうしたことなんだい? いったい、ダルリ村になにがあったんだ?」
老婆はぱくぱくと口を開け閉めした。わなわなと手が震えながら身につけたローブの胸元をかきあわせる。
「ま……魔物じゃ! 魔物が襲ってきたのじゃ……村はあっという間に全滅した……」
「いつのことです?」
老婆は震える指先でパックを指さした。
「おぬしが村を出たすぐのことじゃ! お、おまえが魔物を村に呼び寄せたに違いない!」
ぼくが……と、パックはつぶやいた。
ひいいーっ、と悲鳴をあげながらフライは走っていった。
パックはぼう然となっていた。




