再びハランスの町へ
最初に向かったのはハランスの町である。
ドーデンの町とハランスの町は同盟を結んでいる。
ドーデンの町が魔物に襲われたとき、ハランスの町に救援を求めたのがその証拠だ。
街道を、王の軍隊は整然と行軍していく。
行き交う旅人は何事がおきたのかと、みなあんぐりと口を開け見送っている。気の早いものは、すわ戦争かと足をはやめまきぞいになるのをおそれ遠ざかる。
行軍のしんがりの馬車で、四人は車輪のゆれに身を任せおのおのの想いにひたっているようだった。
ぽつり、とタルカスが口を開いた。
「ヘロヘロはいったいどうしているかな?」
はっ、とパックは顔を上げた。
「タルカスさんがそんなことを言うとは思いませんでしたね」
うふ、とタルカスは笑顔を見せた。
「あいつと一緒に旅をして、だんだんただのスライムとは思えなくなってな。なんだか、古くからの友達のような気がしてきたよ。それにあいつには借りがあるしな……」
「親のスライムを殺したこと?」
ファングが口をさしはさんだ。タルカスは苦くうなずいた。
「あんときはただの魔物の一匹としか思わなかったからな。まさかパックとミリィを守っていたなんて考えもしなかった。もっとも、そのときはパックとも出会っていなかったが」
「あいつはどこか変わっている」
ギズモ教授が目を閉じ、つぶやいた。
タルカスは身を乗り出した。
「どう変わっているっていうんです、教授?」
「わしの研究で、スライムはある程度育っていないと、単独行動はしないはずなんじゃ。わしの見たところ、あのヘロヘロというやつは、まだ子供じゃな。人間で言えば、十才にもならんじゃろう。それなのになぜパックについてきたんじゃろう?」
「好奇心じゃない? あの子、なんにでも鼻をつっこみたがるから」
ファングは肩をすくめた。
「好奇心は猫をも殺す、というが……」
いいかけてあわててギズモ教授は口をつぐんだ。
馬車に揺られ、パックはヘロヘロのことが急に心配になっていた。
と、列の先頭から「ハランスの町だあ!」という声が聞こえ、タルカスは馬車の中からのび上がって外をのぞいた。
「どうやら町についたようだぜ」
パックとファングもタルカスの側に駆け寄り外を眺めた。
ハランスの町が目の前にあった。




