行軍
翌日の夜明け、町の正門には、ドーデン王とその精鋭の兵士たちが勢ぞろいしていた。王はかつかつと蹄を鳴らしながら馬を輪乗りさせ、整列している兵士たちの顔をひとりひとり見つめている。
王が目の前を通過するたびに、兵士たちの間に電流のように鋭気が満ちる。王に見つめられた兵士は、顔を興奮で赤らめ、手にした武器をぐっと握りしめた。
それを町の住民が期待と、不安をないまぜた表情で見守っている。
兵士たちの興奮がうつったのか、王の馬はしきりにあがき、全身にびっしりと汗を噴き出させ蹄でとんとんと地面を打った。それを王はたくみな手綱さばきでいなした。
息を吸い込み、王は語りだした。
「わがドーデンの町の兵士諸君! いまより余は魔王を倒しに出発するであろう!」
おおーっ!
兵士たちの間にどよめきが湧き上がる。
「魔王は邪悪な魔物を召還し、わが町を攻撃した。その結果、貴重な町の財産はもとより、尊い人命も失われた。だが、これは復讐ではない。この戦いは、世界に平和を取り戻すための正義の戦いである!」
王は熱気をこめて叫んだ。
「いざゆかん! わがもののふたちよ!」
わあーっと喚声をあげる兵士たちを従え、ドーデン王は馬を進め始めた。ゆっくりと行進がはじまった。
パックとタルカス、そしてファング、ギズモ教授たちは馬車に乗り、その行軍のしんがりについた。ファングは兄を殺したラフレシアに復讐を誓い、同行したのだった。ギズモ教授は長年の研究の成果を確かめるため同道を申し出た。タルカスもまたパックが行くならおれもと参加を表明した。
王の兵士は総数五十名。王は同行する兵士の数をしぼり、少数精鋭としたのである。
兵士たちの服装は目にも鮮やかな真紅と黒の制服、全員真新しい武器と防具を身につけ、おりからの暁光に、かれらの銀色の装具がきらびやかにひかりを反射する。
「ドーデン王、ばんざーい!」
町の住民のひとりが叫ぶ。
と、その叫びに応じ、つぎつぎと万歳の声があがった。
喚声と叫び声、町は騒然となっていた。
その声を背中に、ドーデン王の行進は続いていた。




