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第91話 ひまりと変態たち。

 ひまりとのコスプレ喫茶に行ったあとから、いひひひひと笑い続けるひまり。

「そんなに七瀬のことが気に入ったのか?」

「お兄ちゃんの友達、可愛い子多いの!」

「なっ!?」

 でもあいつらは人間じゃないし。変態だし……。

「あれれ? まさか満更でもない様子なの!! これは誰かと、いひひひ」

「バカなことを言うな」

 俺はひまりの頭にチョップを入れる。

「ひっどーい! イケメンは手を出さないんじゃないの!?」

 しまった。

 自分からイケメン労働法を破るとは、なんたる不覚。

 コンクリートの上で這いつくばっていると、目を光らせるひまり。

 その目線の先に目を向けると、楓がいた。

「げっ」

 いかにも嫌な顔をする楓。

「ひまりとは仲良くしてくださいなの!」

 ひまりがすぐさま楓に飛びつく。

「うーん。しょうがないなー」

 満更でもない様子でこくこくと静かに頷いてみせる楓。

 俺にはあっかんべーをしてみせる。

 イラッときた。でも俺はイケメンだ。負けるわけにはいかない。

 立ち上がると、俺は膝の埃を払う。

「てか。なんで土下座していたの?」

 ひまりが不思議そうに訊ねてくる。

 そんなのは決まっている。イケメン労働法を犯してしまったからだ。

 と答える前に、楓が口を開く。

「あれれ? もしかしてボクに謝るためだったりして?」

「そうだな。それもある」

 確かにイケメンである俺があんなみみっちいことで怒るなんてどうかしていた。

「え。認めちゃうんだ!?」

 楓が驚いた様子で目を泳がせる。

「さすが楓先輩! 尊敬しますの~!」

 ひまりが構わずに楓にとりつく。

「もう。しょうがないな~」

 楓は嬉しそうにひまりを甘やかす。

「貧乳はステータスなの~。それにほっそい!」

 何やら呪詛のようなことを呟いているが、聴かなかったことにしよう。そうしよう。

「ぐへへへへ。小さくて可愛い子」

 なにやら楓もバグっているみたいだし。

 俺にははかれない世界があそこにはある――らしい。知らんけど。

 百合の花ってこんな感じなのだろうか。

 まあ、いいや。

「ほら。ひまり、帰るぞ」

「あとちょっと!」

 ひまりの身体をなめ回すようにまさぐる楓。

「ぐへへへ。いい身体~」

「あん。お姉様、気持ちいいの!」

 え。これって十八禁じゃないよね? 大丈夫?

 マンガやアニメだったら規制が入っていたわ。あぶねー。しかし、目の抱擁に……。

 って。俺は何を考えているんだ! しっかりしろ。俺!

 頭を振ると、俺はひまりの手を引く。

 が、

「半裸になっているじゃねーか!?」

「ごめん、赤羽っち。なんかやりすぎた」

「いひひひ」

 なんだか、バグっているひまりだが、いいのか?

 とりあえず乱れた服を整えさせる。

「……興奮しないの。赤羽っち?」

「え。いや、血が従兄弟いとこだし、まだ幼いし」

 なんで興奮すると思ったのか、楓は本当にロリコンだな。

 わからないな、って顔をする楓。

「なんでだよ!」

 俺は頭をガシガシと掻いて苛立ちを露わにする。

「お兄ちゃん、お花畑が見えたの~」

「こわっ!? 何が見えたの!?」

 俺は驚きでひき気味に訊ねる。

「ひまり、アイドルになるんじゃないのか!?」

「あー。そうだったの。ひまり、アイドルになって一定層いる女子ファンとあんな関係になり、そして週刊誌に叩かれるの~」

「いや、努力の方向性間違っていね? それ……」

 怪訝な声音で俺は困惑する。

「アイドルになりたいんだ? へ~?」

 楓がにまにまと笑みを浮かべながら、ジト目を向けてくる。

「なんだよ。楓には関係ないだろ?」

 俺は意地の悪い笑みを浮かべ、ひまりの手をとる。

「ひまりはお前なんかに渡せないね」

「いいのかな? そんなことを言っていて」

 楓は鞄から携帯端末を取り出すと、こちらに見せるように操作する。

《ライブ会場、八月二十六日午後九時 空きあり》

 と記載されている。

「なんだ? これ?」

「これ有名な会場なの!? でもどうして?」

「楓お姉ちゃんの言うことを聴いてくれれば、ひまりちゃんをアイドルにして上げることもできるのさ!」

 目を爛々と輝かせる楓。この際、喧嘩していたことなんてどうでもいい。

 ひまりを喜ばせることができるのは楓だけだ。頼みの綱がここにある。

 けど――。

「楓に助けてもらわなくても――!」

「そう。じゃあ、気持ちが変わったら声をかけてね!」

 楓は笑顔でひまりを見やると手を振る。

「ははは。そんな日がくるかな」

 楓が帰るとひまりがふくれっ面で強気の発言をする。

「もう、なんで断っちゃたの?」

 ひまりはやる気満々だったようで。

「もう、お兄ちゃんのバカ!」

「いや、でもほら七瀬のところでアイドルを募集しているから」

「平行してもいいじゃないの!」

 ひまりを困らせる結果になったのは悪いが、俺も付き合いがある。楓とは縁遠い。それに国家機密だし。

 俺は悪くねぇ。

 そう思っていた。そう思いたかった。

 とぼとぼと歩いていると、ぐにゃっと音を立てて、滑り転ぶ俺。

「おワット」

「ワットはアンペアと時間のかけ算なの」

 俺の驚きの声から計算を導き出すひまり。

 と、俺が転んだことで変なところに胸やお尻が当たっている。

「ん?」

 よく見ると、そこには紗緒梨がいた。

「おワット!」

 再び驚きの声を上げ、胸と尻に伸びた手をどかす。

「もう、情熱的なんだから♡」

 紗緒梨は嬉しそうに呟き、起き上がる。

 と、よく見ると、俺の足下で滑ったスライムが紗緒梨に取り込まれていく。

「おい」

「わざとでもいいじゃない。ひまりさんなら異世界でもアイドルをやっていけると思うの? どう? やってみない?」

「異世界の!?」

 ヤバい。この時代、このご時世。なろう系と呼ばれる異世界が憧憬の的となっている。

 だからひまりも憧れるに違いない。なにせ、俺のラノベを読んできた同士なのだから。

「いひひ。異世界、行ってみたいの~」

 ほら。やっぱり。

 これも台本さくしゃに書かれたことだもんな! 分かっていたよ!

 神様どくしゃもお人が悪い。こんな形で異世界転移を読めるなんて。

「それじゃあ、明日、私の家にきて、ね?」

 吐息たっぷりの甘い声で訊ねてくる紗緒梨。

 ぞわわわと総毛立つ。

 なぜか恐怖を感じた。

 しかしなあ、異世界で有名なってもしょうがない気がするんだが……。

「ひまり、異世界でトップアイドルなるの~!」

 なんだかラノベのタイトルみたいなことを言っているが本当に大丈夫か?

 不安になってきた俺は紗緒梨に耳打ちする。

「本当に大丈夫だろうな?」

「安心して、私が精一杯頑張らせていただくわ。うふ。精が出るわね。嫌らしい言葉ね」

「自分でツッコんでりゃ世話ないな」

 俺は嘆息まじりに呟く。

「しょうがない。まずは経験だ。ひまり、明日異世界行きだ」

「うん! ありがとなの~!」

 嬉しそうに呟くひまり。

 そう言いながらひまりは紗緒梨に抱きつく。

「ありがとなの!」

「あらあら。私のことを気に入っていただきありがたいわ」

「いひひひ。しかし、良いバストしてしてまんがな。それにこの大ぶりのお尻! 腰がくびれているからこその魅力なの!」

 ひまりはじっと見つめると解析を始め出す。

 本当にガールズラブなんだな。まあ、人の性癖にとやかく言うつもりはないが、見境みさかいないな。

「そんな♡ あん♡」

 なんで紗緒梨も受け入れているんだよ!

「紗緒梨、ダメならダメって言うんだぞ」

「いえ。テクニシャンだわ♡」

 ええ。なにがどうなってそうなったんだよ。

 俺は呆れながら、二人が満足いくまでやらせた。

「ふう。いい汗かいたの~」

「いや、本当に何をしたんだよ……」

「いひひひ」

 それにしても、アイドルになるならその笑い方やめない?

 まあ、無理にとは言わないが……。

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