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第88話 王様ゲーム終了!

「しかし、俺だけの問題か?」

「げへへへ。わたしに負けはないのだー」

 そう言いながら脱ぎ出す七瀬。

「そうなのさ。ボクはまだいけるのさ」

 キスをした二人がおかしな陽気でカラカラと笑う。

「あら。そうみたいね。私の間違いだったわ。ごめんなさい」

「謝るほどでもない」

 俺って優しいな!

「そのニヤニヤやめてもらえるかしら?」

「そんな顔していたか?」

「していたわよ。まるでカエルみたいにげこげこ鳴いているわ」

 紗緒梨が厳しい発言をしてくる。

「いつもはいやらしい言葉使いなのに、どうしたんだよ? 急に」

「あら。私の下ネタは安くないわよ。そうね。金の玉が1000個くらい?」

「無理やりねじこんできたな。ポ〇モンやっていないと分からないぞ。そのたとえ」

「何を話しているのさ。次の王様ゲームは誰にするのかな?」

「そう。わたしも気になっていたところなの」

 楓と七瀬が気になっていたのか、会話に混ざってくる。

 じゃらじゃらと木の棒を混ぜる紗緒梨。その中にひとつだけ王様がある。

「ふふふ。これで分からないわね」

「もう一度チャレンジなのさ!」

「バカな……。こりていない、だと……!」

 俺は驚きのあまり声を上げてしまう。

「わたしもこりてないよ! これからが面白いんじゃん!」

「ええ……」

 これ以上、やると俺の貞操が危ない気がしてやりたくないんだが。それに俺はイケメンだから、三人とも俺を狙っているだろうし。

 正直、やりにくいのだ。俺が王様になった未来しか見ていなかったしな。

 それにしてもテンションの高い三人だ。

「うふふ。それじゃいくわよ」

「望むところよ」

「ボクも」

「ええい。流れのままに」

 俺は意を決して割り箸の一本を手にする。七瀬と楓も続いて手にする。

「「「せーの!」」」

 一斉にひくと、番号が書かれた人と、王様である赤い印のついた棒があるわけだが……。

 俺は一番だ。

 隣で楓が黄色い声をあげる。

「ボクが王様だね! やった!」

 その証拠に赤い棒を振り回す。

「それじゃあ、今度は二番と三番が、一番に抱きつく!」

「え……?」

 それってハグする、ということか? でもさんにんの時点でどのみち、みんなで抱きつくようなものじゃないか。

「一番は誰?」

 楓が訊ねると、俺はおずおずと棒を掲げる。

「あら。棒を立てて……。いやらしいわね」

「うるせー。俺だってやりたくてやっているわけじゃないんだ」

「それじゃあ、紗緒梨っちと春夏っちは赤羽っちにハグだよ。ハグ!」

「おおう。お前がそれでいいなら、そうするが」

「? どういうこと?」

 楓が頭に疑問符を浮かべている。まるで考えていないらしい。それともホントは俺のことなんて好きじゃないのかもしれない。なんと。それではイケメンとして生まれてきた意味がない。というよりもそんなに好かれていない、だと……!

 驚きで頭の中がぐるぐるしている。

「……。じゃあ、ボクも抱きつくのさ!?」

「破れかぶれになっていないか!?」

「私のあそこも破ってほしいものね」

「紗緒梨は黙っていてくれるかな!?」

「とりあえず、三人で抱きつくのさ!」

「やっぱりやけくそになってやがるぜ」

 つい、口が悪くなってしまった。これではイケメン条約第二項四十条に抵触する。まずいな。気をつけなくてはならない。

 俺の目の前に紗緒梨、七瀬、楓がくる。

「「「せーの」」」

 三人一斉に飛びついてくる。

「うお」

 特に紗緒梨がもっているお胸が柔らかく、弾む。楓のはゴリゴリして痛い。七瀬はほどよいが、勢いが強い。

 というか、三人の質量に勝てるわけもなく、俺は椅子から落ち背中を強打する。

「いった……!」

「あらあら。ごめんなさい。ヒール!」

 緑色の光が俺を包み込む。

 背中の痛みが和らぎ、キズが消えていく。

「な、なにをした? 紗緒梨」

「ふふ。簡単な魔法ですわ。これからは何度でも押し倒せますね」

 そう言いながら俺の背中をさする紗緒梨。

 しかし。距離が近いのか、三人の香りが漂ってくる。柑橘系の甘い匂いに、ミントのような爽やかな匂い。それに石鹸のような匂い。

 三人が乗っかっているので、多分三人のだろう。

 俺は立ち上がろうとするが、三人が力を入れて、俺を阻む。

「な、何をしているんだよ。このままじゃ、なにもできないだろ」

「なにもできない?」

「本当にそうかな?」

「ねー。わたしもできることはあると思うなー」

「な、何を言っているんだ。俺はまだ食事を続けたい」

「うふふ。食べるなら、私を食べよう、ね?」

「ボクもその意見に賛成かな?」

「わたしも!」

 なんか変な流れになってきているが、俺は誰ともつながる気はない。というか、変態とは付き合いたくない。なぜ、それを分かってくれないのか。

「俺は誰とも付き合わないぞ。離せ、離してくれ!」

 必死にもがくと、七瀬と楓が力を入れて抑え込む。紗緒梨が、ジーパンを剥ごうと下半身に近づいてくる。

「もう我慢できないわ」

「そうなのさ」

「うんうん」

「お前たちを信じた俺がバカだった……! 悪いことは言わない。今すぐにやめろ!」

 俺は思いっきり蹴飛ばす形で紗緒梨をどけると、自由になった足をもがき、楓と七瀬をも、どけることに成功した!

「やった。これで自由だ!」

 興奮冷めやらぬ中、紗緒梨たちはイタタと言っているではないか。

 痛い目に遭うのが分かっているなら、やめればいいのに……。

「まったく、なんでそんな強硬手段にでた」

「だってこのままじゃヤらせてくれないだろうと思って……」

 紗緒梨が残念そうに呟く。

「なんだか、パーティの気分、で?」

 混乱した様子の七瀬。

「ボクが王様なのに……」

「お前が命令したのはハグだけだろ? その後は言っていないぞ」

「そうでした。なら、次の王様ゲームで!」

「もうやめだ。こんだけ危険なことになるとは思いもしなかった」

 もし子どもでもできてみろ。お金がない我が家で育てられるか? 否。断じて否。そんな簡単に子どもを作ってはいけません。せめて経済的に自立していないと、いけないのだ。

 そうでなければみんなに迷惑がかかるし、子どもが可哀想な目に遭う。

 そこんところ分かっているのだろうか。一時の感情に呑まれてはいけないのだ。自らを律する必要があるとみた。

 と、持論を展開していると、紗緒梨の顔がかげる。

「私のうちは貧乏よ。でも、幸せだったわ。なら相思相愛な私たちも幸せになれるのじゃないかしら?」

「いつ相思相愛になった? 俺は告白すらされていないぞ。お互いを理解する時間が必要だと言っている」

 これはイケメン第二項第五条に書かれている。本当だ。信じてくれ。

「その点、ボクの家なら安全だね。大金持ちだし」

「そ、そうなのか?」

「だってララァは博士だし。がっぽり稼いでいるのさ」

 確かにそれならお金に苦労しない。だが、お前に子どもができるのか? という疑問がある。アンドロイドが妊娠できるわけもない。空想だ。おとぎ話だ。

「ありえないな」

「ひどい……!」

 楓が涙目になり、やけ酒ならぬ、やけわかめスープを飲み干す。

「最後に残ったわたしはえらい!」

「意味がわかんねーよ!」

「わたしの家なら仕事つきで住めるから、安心だよ」

 確かにコスプレ喫茶をやっている七瀬の家なら働き口に困ることもない。そして自称妖魔なら妊娠もできる……のか? そんなことを聞いてもいいのか? それはセクハラにならないか?

 俺には、

「応えられないな……」

 俺は疑問を抱えたまま、七瀬に告げる。

「がーん!」

「いや、普通の人なら『がーん!』なんてセリフでてこないからね?」

 俺が思っていたよりも繊細なのか、七瀬はすすり泣く。

 大事なことを忘れている気がするが、今は七瀬をあやす必要がありそうだ。

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