Re: Re: 8 // Temporary opening
観測者
[次の更新は19時10分です。]
ポチャ…ン――
水面に波紋が広がる。
いくつもの水滴が水面に滴る。
音だけが反響し聴覚を刺激する。
風のない漆黒の空間。
輪郭のみが白く目立たせた。
――ピーィィ
KITEの鳴き声。
羽ばたきながらジョウの傍に降り立つ。
KITEはジョウの顔を覗き込む。
――ピュルルゥ?
小さく首を傾げた。
ジョウは静かに寝息を立てていた。
KITEの存在さえ気づかずに……
「寝て逃げているつもりか?」
その答えは返ってこない。
水滴の音が空間を満たし、眠りの質を深くしていた。
「癒し空間ではないのだがな…」
観測者の声は虚しく静寂にかき消されていく。
〝ここに留まっていてはいけない。今すぐここから出ていけ〟
サファイヤが青白く光り輝く。
漆黒の空間に、彼を包む様に全身に色をつけ始めた。
――ピチャ…
彼は水面から上昇していく。
ラン
【世界に接続します。】
風も空気の振動も感じない。
彼の全身にノイズが走る――姿を消した。
KITEは翼を広げ、デスクへ飛び移った。
「これで進む…だろうか…」
Re: Re: 8 // Temporary opening
聴覚だけが先にこの世界に接続し始めた。
静かだ。
アカネの声さえも聞こえない。
自分の呼吸と鼓動が妙に際立たせていた。
くぅ〜
腹の音が腹部を振動し指先がわずかに動く。
彼は無自覚に腹部を擦った。
ぐぅ〜
そっと、瞼を開く。
視野はぼやけ、はっきりと物が見えない。
意識は朦朧とし目の前の“白い物体”に手を伸ばした。
(柔らかい)
――それを掴んだ。
腕に何かが擽る。
視界がぱっと鮮明に映った。
「っ!!?」
掴んでいた手を速攻離した。
目の前にはうたた寝する看護師の姿。
唾を呑んだ。
そっと体を起こし身を離した。
離れすぎた体はバランスを崩しベッドから落下した。
――ドッスン ガラガラ…
看護師は肩を跳ねらせ起きる。
「何の音!?」
椅子を倒して立ち上がる。
「ジョウさんが居ない!!」
ベッドの反対側から唸り声が聞こえてくる。
看護師は駆け寄る。
「ジョウさん!!大丈夫ですか!?」
ジョウの体を支える。
「立てますか?」
「イチ、ニのサン」
勢いよく立ち上がる。
「痛ぁ…」
「ベッドに座ってください」
誘導されゆっくり座った。
看護師は彼の前に屈んだ。
「お名前言えますか?」
「はい。でも言いません」
「言ってください!」
彼は視線を逸らした。
ジョウ
「KITE3曹長です。それでいいですか?」
灯
「事情があるなら…それでいいです」
「私は、藤田 灯です。助手をしています」
灯はジョウへ頭を下げた。
灯
「質問に答えてください」
「どちらからいらしたのですか?」
ジョウ
「……」
灯
「次の質問です」
「KITE3さんはKITE6さんとどういう関係ですか?」
ジョウ
「……」
灯
「黙秘…」
「最後に、KITE6さんは我々が預かっています。協力と同行をお願いします」
ジョウ
「人質か…」
灯
「人聞き悪いなぁ…誰も人質なんて言ってないのに」
灯は不服そうな表情で見つめてくる。
灯
「車椅子用意します。ここから動かないでくださいね」
灯は立ち上がりベッドから離れようとした。
灯
「絶対ですよ!!」
ジョウはため息を吐いた。
看護師が去ったのを確認し立ち上がった。
足音を忍ばせ出口の方へ移動。
灯
「あ!」
(バレた!)
医務室から勢いよく飛び出し廊下を駆け出す。
灯
「Connect!連絡して!!」
Connect
【了解。宛先を教えてください。」
灯
「直樹さん!言わせないでよね」
「待って!!」
ジョウの後を必死に追いかける。
ジョウ
「しつこい…」
視線の先に人が立っていた。
ジョウより小柄だ。
体勢を低くし加速、勢いに任せその人物へ回し蹴りを入れた。
その人物に脚を掴まれ華麗にかわされ、投げ飛ばされた。
体勢を整え転倒は避けられた。
灯
「直樹くん!!」
直樹
「僕から逃げれると思う?」
ジョウ
「ラン!!」
ジョウは誕生石へ叫んだ。
直樹
「…これのことかな?」
直樹はサファイアを手に持っていた。
その宝石を目にし、息が詰まった。
直樹
「取り外すの大変だったけど…生命に影響ない様で良かった」
ジョウ
「それを…どうやって…。外せないはずでは……」
直樹
「ん?取れたね」
「でも、取り外したら機能が停止しちゃって。一体どういう原理なんだろうか…」
ジョウ
「アカネは!アカネを返せ!!」
直樹は宝石をポケットに仕舞った。
直樹
「厄介な場所に居てね……可愛がられてるよ」
ジョウ
「どういう意味だ!」
直樹
「僕が聞きたい。僕だと教えてくれないんだ」
「代わりに僕の母さんに聞いてくれないか?」
ジョウ
「は?」
直樹
「マジでどうにかして…」
ジョウ
「??」
直樹
「付いて来て」
直樹はジョウに背を向けて歩き出した。
灯
「行きましょうKITE3さん」
(え…付いて来るの?)
灯
「アカネさんに会えますよ」
ジョウ
「あ…ああ」
直樹はある部屋で立ち止まる。
スキャナーへ手をかざした。
――シュゥー
扉が開いた。
「あ!直樹おかえり〜」
「アカネさんこれも便利なのよ!」
アカネ
「す…すごい!何これ!何に使うのですか?」
女子トークが途絶えない。
灯
「ああ!ズルい!私も混ぜて〜!」
灯も混ざりトークは盛り上がる。
ジョウは黙ってアカネを見つめる。
腕を組み呆れ半分で見つめる直樹。
ジョウ
「アカネ…」
アカネ
「ん?」
ジョウとアカネの視線が重なる。
瞬きだけで存在を確認している様だった。
アカネは静かに立ち上がる。
アカネ
「おはよう」
ふわっとアカネが胸元へ顔を埋めてきた。
ジョウは息が詰まった。
そっと彼女の背中へ腕を添えた。
ジョウ
「お…はよう」
直樹は視線を外したまま呟く。
直樹
「この宝石。調べさせていただいても構わないか?」
「その間この施設で自由に過ごしてくれていい」
「ただし誰か監視をつける」
「大人しくしててくれればいい」
ジョウ
「……禁忌にだけは触れるな。それだけ忠告しておく」
直樹
「母さん後は頼んだ。僕は研究室に戻る」
「灯も仕事に戻って」
灯
「わかった」
直樹と灯は頭を下げて部屋から出て行った。
真彩
「座って」
「聞かせてよ…愚痴でも何でも!おばちゃんが解決してあげる」
「私は、大越 真彩 准尉よ。よろしく」
真彩の笑顔が眩しい…そんな中、手を差し出してきた。
ジョウはその手を取らなかった。
真彩
「お茶とコーヒー、あと…紅茶もあるわよ?何飲む?」
アカネ
「ここのカフェオレ美味しかったよ」
小さく微笑んでいる。
その表情にジョウはやさしく微笑み返した。
アカネの髪をそっと撫でる。
真彩
「あっ。ねぇお二人さんお風呂あるわよ」
「シャワーもあるけど」
「入りたかったら言ってね〜」
「…おばちゃんはお邪魔虫ね」
「アカネちゃん私がここに居ないこと黙っててね」
そう独り言の様にいいながら、その場から姿を消した。
――静寂。
二人は見つめ合う。
まるで存在を確かめ合うように抱き合った。
真彩
『若いわね…』
Dovira
【マヤも…いつも旦那様と…。】
真彩
『Dovira?』
Dovira
【はい?】
真彩
『LOVEは年齢関係ない』
Dovira
【…きゃぅ…。】
真彩
『お前が照れてどうする』
『…熱いな。ぅ…大地がここに居れば…』
Dovira
【夫婦仲がよくて私は幸せです。】
真彩
『あの二人ほどじゃない』
Dovira
【いいえ!マヤの方がお熱いですっ!】
真彩
『おおっ!ちゅ〜』
Dovira
【きゃ〜】
ジョウとアカネの実況をする主婦とAIであった。
観測者
[最後まで、読んで頂き、ありがとうございます。]




