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憎まれ令嬢、死に戻ったけど政略結婚を選び直します  作者: おいや


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3/13

3

 死後の世界(ヴァレリエ)もお湯が温かくて気持ちいいわ。――などと、思考を放棄したくなる頭と心を奮い立たせて、イヴォンヌは何度も確認しようとしていた。


(メア、あなたまさか私を追って死んだなんて言わないわよね……?)


 死したはずの自分が在る以上、ここが現世でないことは明らかだった。思い描いていたものと少し違う気もするが、それを疑う理由もない。


 だから、イヴォンヌにとってメイド(メア)がここに居るということは、彼女も死んだということにほかならなかった。


 それでも、心が静かに軋むのを覚えた。メアはイヴォンヌより七つは年上の女性だが、それでも死ぬには早すぎる。


 なぜ、死んでしまったというのか。

 イヴォンヌは、ふと「自分の死が、彼女を追い詰めたのではないか」と、不安になった。自分でも慎ましくない考えだと分かっていたけれど。

 もしそれが自分の死によるものだったなら、彼女を愛する人々に顔向けできるはずがない。


 それに、仮にそうでなかったとしても、フォローする言葉が思い浮かばない。


 なんと言葉をかければよいのか。

 イヴォンヌには、答えが見つからなかった。


(な、情けない主人。どうしましょう)


 

 ――というのが、まごつくイヴォンヌの胸中だった。

 もちろん、それをメイド(メア)が解せるはずがない。しかし、イヴォンヌの世話を長く看てきたメイドである。


「お嬢様、今日はどこかご体調が優れないのですか?」


 支度も終盤、イヴォンヌの髪を丁寧に梳かしながら、メアは天気の話をするかのように尋ねてきたのだった。


 しかし、イヴォンヌからしたら思いもよらぬ問いかけだった。様子が口ほどにモノを言っていたことに、気づいていなかったのだ。


「いいえ!」


 胸の弾むままに、言葉が口から飛んでいく。


「左様でございますか。それでは、メアに粗相でもございましたか……?」

「そんなことないわ!」


 イヴォンヌは、この仕事熱心なメイドの懸念を何としても振り払わねばと、そちらの方に頭がフル回転しすぎてしまった。


「ヴァレリアでも変わらぬ献身に頭が上がらないとさえ思うもの!」


  刹那、イヴォンヌは口から出て言った言葉に悔いて、思わず身を戒めたくなった。戸惑いだけは顔に出さぬよう、きゅっと唇と目に力を入れて、鏡越しにメアを見つめる。メアは呆気にとられた顔をしていた。ひとつ、ふたつと歩く程度の間が空いて五つ目。



 メアはイヴォンヌの背後から隣にまわり、膝をついて身をかがめた。「お嬢様」と声をかけてくる。

 イヴォンヌは求められていることを理解し、メアと対面するように向き直る。二人の目線が整った。口を先に開いたのはメアだった。


「大奥様がお亡くなりになられて、とてもお辛かったのですね」


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