第4話:彼らの日常、平和な一日。
補足データ。
終末世界の日常。
出会いを経て数年後の彼らの記録。
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・氏名:年齢/装備品。
・響:18歳、少年/メリケンサック。
・亜美:16歳、少女/金属バット。
・ナルミ:推定16歳、少年/???
・ボルト:推定50代、女性/ショットガン。
・誠一:21歳、男性/刀(竹刀袋入り)
・真由:20歳、女性/小型爆弾。
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ボルトの家で、野良猫のような生活をしているナル。
子供達の保護施設である『ひまわり園』で、施設のお姉さんとして子供達を支えるマユ。
保護施設の顔役である父の代理として、子供達を守る自警団のセーイチ。
今日も下らない喧嘩をしている亜美と響のカップル。
三視点でまとめた小話。
終末世界は、本日も異常なし。
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×月⚪︎日(日)【AM 11:00】
ボルト婆ちゃんの家:縁側にて
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変わらぬ曇り空。
簡易的に修繕された、ボロい縁側。
その真ん中で、日向ぼっこするのは「地域猫」ーーと呼ばれる少年が、丸まって眠っていた。
ーーダンダンダン。
眠りを妨げる荒々しい足音が、廊下の奥からやって来た。
そして、少年の尻をホウキで叩く、老婆。
ーーバンバン。
「おい、粗大ゴミ!掃除の邪魔だよ!」
通気性のいいボロ屋の隙間から、老婆ーーボルトの怒声が上がる。
吊り上がる隻眼の鋭い眼光で、少年の背中を呆れ混じりの瞳で見つめた。
「ネジが乗りそうな無駄なまつ毛、毟り取って塵取りにしちまうよ!」
数秒の無言。
ーーもぞり。
ボルトの言葉に数拍遅れで少年、ナルが身じろいで見せた。
「……んー。婆ちゃん、朝から元気……」
「何時だと思ってるんだい?もう昼過ぎだよ!」
「えー、……今日はいつもより太陽、見えないじゃん」
薄ら上がるナルミの瞼。開いた目から見上げた空は、いつもより雲が厚かった。
「そんなもん、体感で分かるんだよ!!」
「あー……」
間髪入れられたボルトの返答に、寝転がったまま気の抜けた返事を返す。
そしてぽりぽりと背を掻くと、寝そべったまま背筋を伸ばした。
「……てか、まつ毛は俺の本体だから毟らないで」
「だったら今すぐシャキッと起きて働きな!!」
「労働はノーセンキュー……」
眠気で押し上げた瞼が再度落ちかける。しかしボルトはすかさずホウキで背中を突き叩き起こす。
「働かざるもの食うべからず!ほら、さっさと退くか、ゴミ捨て場に置かれたいのか、自分で選びな!」
「もー……ばーちゃんの鬼婆ー、労基法の極悪人ー」
「無駄口叩いてると追い出しちまうよ!!」
「……はあ、仕方ないなー。……で、何したらいいの?」
「今朝転がってきたばかりのゴミ掃除だよ」
「……はーい」
淡々というボルトに、ナルミは一つ、欠伸を零した。
◇
ーー店先の数十メートル先に積み上がっているのは、炭のような黒い物体。スコップ片手にそれを適当な穴場に埋める作業。
「……はあ、めんどい」
黙々と作業を続けるナルミ。そして、全てを片付ければ、穴に蓋をするように土を被せた。
◇
屋根の半分がブルーシートで覆われた二階建ての小さなボロ屋。
戻って来たのはボルトの店先側の玄関。
ひび割れた横スライドの扉の先は、所狭しと生活雑貨を乱雑に積まれた雑貨屋だった。
店の奥にあるレジカウンターの裏に小さな人影がポツンと浮かぶ。
古びた木製の椅子、傾いた脚。ギシギシと鳴るそれに腰掛けていたのは、ボルトだった。
「掃除は終わったのかい」
「まーね。どうせやるなら早く終わらせたかったし」
「普段からそのくらいやればいいんだよ」
「……あ、羊羹落ちてる」
ボルトの愚痴を遮るように、ナルミは床にしゃがみ落とし物を拾う。
「やれやれ……本当にこのクズ猫は人の話を聞かないね……」
その光景に深くため息をこぼしながらも、ボルトは手元のヤカンをボロ布で磨く。
「今日はいい日かも……ラッキー」
小袋に包まれた一口サイズの羊羹バーを手にし、ナルミはその場で包装を剥き出す。
その横には色褪せてポロポロと崩れかけていた、貴重な本が棚の隙間に挟まっていた。
羊羹バーを一口齧りながら、ナルミは何となくタイトルを眺める。
だが、ナルミは退屈そうに呟いた。
「労基法とかほんとに無駄……俺の法なら、18h睡眠が基本だって、書いてあるのに」
「労基法も顔真っ青なお偉い法律だね!全く、キリキリ動きな!クズ猫!!」
当たり前のように毎日続く、曇天の空。
それ以外の空の色を知らない少年は、今日もボルトの家でのんびり暮らす。
「……セーイチ君、今日もおにぎり持って、拠点に行くのかな……」
戻って来た縁側、再び寝転がるナルミ。
「……俺は、ここで、光合成しとくから……パス」
瞼は静かに閉じられた。
#野良猫ナルちゃん
#塵取り未遂
#逆労基法
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**×月⚪︎日(日)【PM 14:00】
子供たちの施設:ひまわり園にて
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崩れた建物が立ち並ぶ廃ビル郡から数キロ先。
こじんまりとした二階建ての長屋のような作りの建物。
コンクリートの壁で出来た小さな施設所は、周囲よりも頑丈で綺麗だが、塀をぐるりと有刺鉄線で囲われていた。
正面にあるのは錆び付いてはいるが、鉄柵で出来た堅牢な門。その横には、木製の板に【ひまわり園】と彫られた看板が静かに飾られていた。
「セーイチにーちゃん!遊んでー!」
「ブーンってしてー!高いのがいいー!」
子供たちに揉みくちゃにされるセーイチが、数名の少年に囲まれていた。
「こら! 俺の服を引っ張るな!……ああっ、それは施設の大事な備品だ、壊すなと言ってるだろ!」
「誠一さん、助けてくださいぃぃ! 」
悲痛な情けない声を上げる真由。
「子供たちが、あたしのくるりんぱを解いて、そこにドングリを詰め込もうとしてますぅぅ!」
「自爆ハムスター」と一部で囁かれる女性、真由は幼い女の子数名に囲まれていた。
ゴムが外され解れた髪。その結び目には、数少ない木から落ちたドングリの実。それを少女達が我先にと遠慮なく詰め込み、マユは揉みくちゃにされていた。
「マユさん、落ち着け! ああもう、お前たちも落ち着け!これ以上騒いで室内を荒らすな!」
室内を元気に走り回る子供たち。それを追いかけるセーイチ。手を引かれ走り回されるマユ。
施設の兄、姉として子供達と過ごす二人は、今日も振り回されていた。
子供たちの純粋な暴力(遊び)に、人類最強の「不憫」を発揮するマユとセーイチ。
そして、手を引かれていたマユの髪からポロポロとドングリがこぼれ落ちた、その先はーー。
ーーコロコロ。
「~~っ!?」
セーイチの足裏にピンポイントで落ち、それに気付かず踏みつけた。声にならぬ絶叫を上げ、セーイチが崩れ落ちる。
そして、子供たちに振り回されながらも走り回っていたマユはーー。
「あっ、あわわっ、転びますぅぅ!」
ーードッシャーーーン!!
とうとう足をもつれさせた。そして、前のめりに倒れ込むマユ。突っ込んだ先には、鉄くずで作られたブロックの入った箱。
「ふぎゅう……」
そのまはま壁に激突したマユは、目を回し倒れ込む。
「あれ、マユちゃんまた転んだのー?」
「毎日転んでばっかね、大丈夫ー?」
ピクピク痙攣するマユを囲み、数名の子供たちが眺める。
「マユさん……ッ!」
足裏の痛みに悶えるセーイチは動けず、膝を着いたまま手だけをマユに向け伸ばしていた。
「正義は……正義は何処に……ッ!」
だが、大半の子供たちは無邪気にはしゃぐばかりで、セーイチはその不憫さに声を上げる。そして床に拳を叩きつけ、静かに項垂れる。
——そんな午後の一幕だった。
◇
——三十分後。
ようやく目を覚ましたマユは、頭の上に大きなたんこぶを作っていた。
「あいたた…、失敗しちゃいましたぁぁ……」
「もう、子供たちと一緒に走るな……」
「ご、ごめんなさいぃ……」
子供たちは何事もなかったかのように外を駆け回っている。
今日もひまわり園は平和だった。
#子供は最強の敵
#銀髪不憫お兄さん
#くるりんぱにドングリ
#施設崩壊5秒前
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×月⚪︎日(日)【PM 16:30】
廃墟ビル下:合流地点にて
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ひまわり園から出た真由と誠一は、ボルトの店に向かうべく二人並び歩いていた。
荒れた街並み、崩れる建物。舗装されていたであろうアスファルトも、ひび割れ凸凹とした地面。
外の世界は今日も変わらず、街中は空虚な空気が流れていた。
◇
慣れた足取りで二人は歩き続け、子供たちの様子を雑談混じりに話していたその時。
散歩中の野良猫のような存在、ナルミと鉢合った。
「あ、ナルちゃんさん! 今日もまつ毛が素敵ですね!」
「……あ、マユちゃんさん。今日も大袈裟に転んでたって聞いた」
「そ、その話は一体どこから……!?そっちの方角から来たって事は、さっきまで公園のベンチでお昼寝してましたよね!?」
ナルミは眠気で半目のまま、ぼーっとした顔で真由を見つめる。
「ん、施設の人が話してたの、寝ながら聞いた」
「外で噂されてたなんて……!わ、私は何たる恥晒しを……!!」
動揺にわたわたと手足を動かし、自身の情けなさに顔を崩し、ほんのりと涙を浮かべる真由。
「だ、大丈夫だ、真由さん!真由さんはちょっとそそっかしい……いや、ちょっと空回っただけだと皆知っている……!」
それを見た誠一は焦りを浮かべたまま、真由の背を一度軽く叩いて宥めた。
真由の表情や感情は徐々に落ち着きだすが、気恥しげにもじもじと指先を弄り、背を丸め小さくなっていた。
二人のやり取りをぼんやりと眺めるナルミは、何気なく口を開く。
「……ハムスターの、回し車みたい」
ぽつりと零されたナルミの言葉。
それに衝撃を受けた真由は口を開き、間の抜けた顔を晒した。
「ハ、ハムスター……回し、車……?」
「そう、ちっちゃくてクルクル回る柵?それ回してるハムスターみたい」
知らない?とナルミが首を傾げながら真由に問いかける。
「おいナルミ! マユさんを小動物扱いするな! 」
そこへ、誠一が割り込むように会話へ入ってきた。
「確かに今はちょっと落ち着きはないし、せかせかした所はあるが。施設でマユさんは、子供たち相手には立派に仕事をこなしているんだぞ……!」
誇らしげに胸を張りながらナルミへと告げる誠一。だがーー。
「……セーイチさん。それ、フォローになっていません……」
「!!す、すみません!!!」
しょんぼりと項垂れた真由に、誠一が慌てて謝罪の声を上げた。
「……セーイチ君。声、デカい」
「誰のせいだと……っ!!」
ナルミへ噛み付く誠一。
それを興味なさげに聞き流すナルミ。
真由は精神的なダメージを負いしゃがみ込と、地面にのの字を描き始めた。
そして、誠一は懇懇とナルミへ説教を垂れ流す。それは、普段の生活態度まで話が飛躍して行った。
「そもそも、お前は普段からだらしなすぎる!俺はいつも働けと言っているだろう!」
「……それはノーセンキュー」
適当な返事を返しながらナルミはふと視線を上げた。
上空に見える黒い影にナルミは視線が釘付けになっていた。
「……あ、空からアミちゃんが降ってきた」
「「……えっ?」」
ナルミが指を差したその方角を、二人が視線で追う。
すると、絶叫を上げる黒い影が、徐々に地上へと向かい落ちて行った。
ーードシャアアアン!!
三人の数メートル先にあった廃墟の建物跡地、瓦礫の中に亜美が突っ込む。
「あ、亜美ちゃん大丈夫ですか!?」
すぐさま駆け寄る真由。
誠一は何処から降ってきたのかと、辺りを見渡した。
すると、自分たちが最終的に集まるべき目的地。
彼らがいつも集まる拠点のマンションの5Fのベランダから、響が三人に気づき呑気に片手を振っていた。
「何をしているんだアイツは……っ!」
「ッ!響、ぶっ殺す……!!!」
誠一と亜美は、怒りを響に向ける。
「……亜美ちゃん。今日の人間ロケット花火も、綺麗だったなー」
ナルミは欠伸を一つ零した。
#ハムスターと回し車
#空から降ってくる少女
#それを眺めるクズ
#平和とは
ーーーーーーーーーー
お読みくださり、有難うございました。




