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終末世界の生存記録。  作者: 雪見もち子
【2章】過去軸:出会い編

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第2話:マユの悪夢、セーイチの正義

補足データ。


真由:13歳、少女。

誠一:15歳、少年。



守れなかった少年と、居場所を失った少女たち。


届かなかった正義。

届かなかった祈り。


それでも、二人は生き続けた。


これは、真由と誠一の最初の記録。


終末世界は、本日も異常なし。


※流血・焼失表現有り。

ーーーーーーー

場所:某都心郊外の隅

古い長屋型の木造施設

ーーーーーーー


少女の目に映るのは、曇天の空。


空へ向かっていく灰色の煙。

元は木製の壁だった炭と、焦げ跡。

まだ火の粉の舞う建物。

その前に少女は座り込んでいた。



「どうしたら良かったんですか」



問いかけのような、呟く声。

破れた衣服。

乱れた髪。

煤に塗れた、白い頬。


涙の跡は、枯れていた。



「……すまない」



少女の背後に立つのは、一人の少年。


上質なシャツは破れ全身を汚し、疲弊の色を濃く浮かせていた。

震える拳に残る傷と血痕。

少年の瞳は昏い色を滲ませる。



「どうしたら、私たちは奪われずに済んだんですか」



むき出しの素肌に、赤い切り傷や打撲の跡。

けれど、それ以上に心の傷が、じくじくと痛んでいた。


真由の前で横向けになる幼き少女。

真由の手を握る柔く小さな手。


その手をただ握り返す事しか出来ない真由は、虚ろな瞳で崩壊した建物を見つめていた。

建物の外に避難した幼い子供たちは、その誰もが傷を負い息を潜めていた。



「私たちは、ただ生きていたかっただけなのに……」



吐き出される言葉は、一人の少女としてのささやかな願い。

けれど、それは誰にも届かない、世界への絶望の声。



「俺の正義は、君たちに届かなかった」



声帯が掠れ、悲痛の滲む少年の声。

返ってきた言葉に、真由はようやく後ろを向いた。



「……そう、ですね……」



俯いたまま、交わることのない二人の視線。



「けれど、貴方が悪いんじゃありません……」



一呼吸、真由は息を吐いた。

そして、ゆっくりと視線を上げる。



「弱い私たちが悪かったんです」



それは、不器用に上がる形にならない笑みだった。



「…………ごめんなさい」



色を無くした真由の声に乗せられた謝罪の言葉。

そして再び背を向けるように、真由は少女を見つめる。



深く傷ついた小さな身体。

冷え切った体温。

それでも、確かな温もりはまだ残っていた。



「……生きてる。けれど、この子たちの傷は、一生残ってしまうんです」



真由は俯いた顔を隠すように、少女の胸元にそっと乗せる。

ぽたりと落ちる雫が、少女の服に染み込んだ。



「俺は……」



無力に誠一は立ち尽くす。

それでも、彼は一度足りとも膝だけは屈しなかった。



♯届かない祈り

♯届かない声


ーーーーーーーーーーー


【後書き】

真由と誠一の出会い編でした。


お読みくださり、ありがとうございました。

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