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第四章 Background of Spirited Daughter予想 9




「無事、大団円、となったようじゃないか」




 その日の夜、仁楠は再度亜院に呼び出されて、いつもの立川駅前の居酒屋の個室にいた。




 小さな祝勝会も兼ねよう、と、亜院は座敷の部屋を予約しており、仁楠は少し恐縮した。




「ええ。増真くんたちの言う校庭の広さについても、始業前、放課後ともに、クラブ活動組と、ただ放課後遊びたい組との適切な区割りができていなかったことが原因でした。


クラブを、言わば外注したことで、少なからず日常的な校庭の使用については保障できるかと。もちろん、運動会など大型行事の問題はまだ解決していませんが、これなら、増真くんたちが学校に行っている間に、すぐに効果も表れますし」




 レスターによる、ボルドー小学校のZEB化に向けた調査についても、早ければ週明けから始まる。騒音対策、というよりは、より生徒に快適に過ごしてもらうため、という名目である。だが近隣の住民からすれば、とくに問題が表面化する前から騒音問題に取り組む学校、ということで評判が上がるきっかけになるだろう。


「大手柄じゃないか」




 手放しに褒める亜院だったが、仁楠は、早く本題に入ってください、と言った。




「呼び出したのは、塚さんのことでしょう」


「うん、そのことなんだけどね」




 ガラリ、とふすまが開いた。開いたと思うと、塚が現れた。




「え、え、どうしてここに」


「わたしも呼ばれていたので。亜院さん、わたしから話してもいいですか?」




 どうぞ、と笑う亜院の横に塚はちょこんと正座をして、ことの顛末を話し始めた。




「どこから話しましょうかね。


えっと、主任が、昼鈴部長に亜院さんのことを聞いた日がありましたよね」


「うん。尾怒さんに教えてもらった日ね」


「その時点で、昼鈴部長から亜院さんに、仁楠主任があなたのことを聞いていましたよって連絡が入ったんですよね。


亜院さんは、なんでだろうな、とすぐ仁楠主任のことを調べようと思って、外流さんに話をきいたんですって」」




 あぁ、と仁楠は、少し酒まじりのため息を吐いた。




「そうか、つまり」


「あー! あー! わたしが話しているんです! そっちからはダメです!」




 塚は両手で大きくバツ印をつくった。大縄跳びで逆から入ってくるようなものですよ、と少し頬を膨らませた。




「えーと、それで。外流さんは、黒根社長とわたしとが親子だと予想して、仁楠主任に、わたしの髪の毛を採取するよう頼んだんだ、でも断られちゃった、って言ったんですね」




 時系列としてはどうだ、と、酒がまわりはじめた頭で仁楠は必死に思い出した。




 外流から渡された封筒内の黒根の毛だけでは不十分だったから、社長室で決死の毛髪奪取劇を繰り広げた。亜院と初めて会ったのはその後だ。




「亜院さんは、外流さんから事情の詳細を聞いて。あぁ、仁楠という男は、たぶん、この封筒に書かれた連絡先を利用しただろうな、と予想して、高木さん、でしたっけ、高木さんに接触したんですね」


「ちょっと待ってね。亜院さん。ぼくと会ったこともないのに、ぼくがそんな短絡的に動くなんて、どうして予想したんですか?」


「違っていたら、また別の仮説を立てていたさ。


 言っただろう? 総当たりで検証する気概はあるのか、って。ぼくはそれくらいするつもりだったさ」




 自分で分析機関を調べて選べばよかったな、と仁楠はようやく公開した。




「その時点で高木さんには、二度目の黒根社長の毛髪が送られてきていた」


「ぼくが社長室から必死に取ってきたものだよ。それでも検出できませんでした、って言われて、絶望したのを思い出すよ」


「そこからなんです」




 んん、と塚はわざとらしく咳払いをした。




「そこから、仁楠主任は、パラレルワールドに行っちゃったんです」

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