第二章 デオキシリボ核酸の存在と現実ギャップ問題 12
十二
「ああーー! 阿部瑠さんからまた来たよ」
弥古尾がうなった独り言は思いのほか大きく、近くにいた仁楠が反応した。
「どうした。まだ続いているのか」
「相手が次は、ミラクルファイバー洗浄機能付き、と入れてきたんです」
「まったく意味が分からないけど」
「意味が分からなくても、ナルヴィク社のものより何だかすごそう、と思える単語ではあります」
ナルヴィク担当営業の阿部瑠から、何か妙案はないですか、とまた連絡が来たようで、もうないよ、と弥古尾は頭を抱えた。
その翌日、阿部瑠から一つの案が送られてきた。
「いっそ争うのはやめようと思うんです。これまでお付き合いいただいて申し訳ないのですが、品質勝負で行こうと思います」
弥古尾にとっては願ったりかなったりの提案だったので、さっそく賀臼へ報告をした。しかし、ここで案件が終わることを嫌ったのか、あるいは自社ではなく相手側の営業の案で解決するのを嫌ったのか、阿部瑠案は賀臼により却下された。
「おかしいと思いませんか主任。このまま続けても平行線ですよ。阿部瑠さんになんと言えばいいのか」
「ダメでした、って伝えるだけだと不親切だよ。一緒に考えるから、一応、その、ミラクルファイバー洗浄機能、を超える何かを考えてから、まだ戦いましょう、って伝えるほうがいいんじゃないかな」
仁楠はその日弥古尾と残業して一晩中思案した。そして深夜テンションとなり、正常な判断ができなくなったころ、
『パーフェクトファイバー洗浄機能によるユートピア付き』
というところに落ち着き、深夜三時にメールを送信した。




