053
長い間、夢を見ていたのかもしれない。
ようやくアメミットのカプセルを出た俺は、疲れた顔になっていた。
全身汗だらけで、疲れが色濃く見えた。
カプセルのそばには、恋も一緒に出てきていた。
アメミット用の銀色スーツを着ていて、顔が赤かった。
俺の顔を見るなり、背中を向けた。
「アンタに、あんなことをされるとは思わなかった」
「マートにどうしても、好きを教えたかった。
それには、どうしても同性であるお前の協力が必要だったから」
「マートは7人のモデルでしょ。男も入っているし」
「でも、見た目は少女だし。一番色が濃いのは、なんと言ってもお前だ。打越 恋」
その言葉を、言ってきた人物がいた。
茶色のスーツを着た、少ししわのある顔の男。
老けた顔で、それでも打越博士は姿を見せていた。
「博士は、マートになぜ好きを教えなかったのですか?」
「このAIは、未完成なのが一番大事な形だ。
完成してしまっては、反省をしない。
反省をさせるために、あえて人間のような未完成なAIにした。
それがマートであり、七人のモデル……八人目の蓮も含めた存在だ」
「未完成のAIか」
モニターを見ながら、打越博士は操作を続けた。
「そう、完璧なAIは、神になり得ない。
なぜならば、完璧な神は神話の中でも存在しない。
神だって、過ちも失敗も繰り返す。だから、マートもそれぐらいでいいのだよ」
「それよりも、アップデートは出来るのか?」
「ああ、君たちのおかげで、無事に出来る事になった。感謝するよ」
打越博士が言うも、俺の隣にいる恋は口を閉じていた。
「マートは、この後どうなるの?」
「アップデートして、再起動をかけて……全て新しいシステムに変わる」
「その前に、頼みがある」
「なんだ?」
「マートを一日だけどうしても、セントラルタワーから出せないか?」
俺の言葉に、打越博士は首をかしげた。
「マートはAIだ。外の世界に出ることは、どうしても出来ない」
「だが、彼女の意志も自我も、確かに育っている。
アップデートする前にマートに見せたいんだ。蓮が言っていた『好き』の正体を。
どうにか、見せることは出来ないか?」
「それは難しい……」
「あたしからもお願い」
俺の隣で、恋が頭を下げていた。
娘が下げた頭を見て。博士は首を捻っていた。




