051
廻沢に、もう一つの準備をさせていた。
それは、恋のアバターを作ること。
セントラルタワーに、恋のアバターを潜入させることだ。
恋も今頃、俺の隣のアメミットの中で眠っていた。
クイックナンバーの与えられた彼女をここの呼び出すことに意味があった。
マートが作る仮想空間では、アバターを作らないといけない。
恋の体をモデリングして、この場に呼び出してきた。
「あたしの姿、これなの?」
「やっときたか。恋」
「うん、これがマート?」
恋の前には、恋よりもさらに小さな女の子が見上げていた。
「ああ、マートだ。この世界の、人類の神」
「これね、あの馬鹿親父が作ったロリコン趣味の神は」
「馬鹿親父、ロリコン……知っている」
マートが、恋の言葉にいちいち反応していた。
「今の会話は、全然有益じゃないし聞き流しても言い」
「それで、彼女はどうしてここに連れてきたの?」
「簡単な話、彼女には好きがあるからな」
「あたしの好き?」
「そうだ、恋。お前は好きな奴がいるだろ」
俺の言葉に、恋はじっと見ていた。
見ていた瞬間、顔がはっきりと赤くなった。
「な、な、な、なんで急に言うのよ!」
「俺も言った、お前もここでマートに言えるか?」
「言えるわけ、無いじゃない……」
「大丈夫だ、ここには3人しかいない」
「ラボの人間とか、見ているでしょ」
恋は、明らかに照れていた。
それでも、マートは冷たい目で恋を見ていた。
「情報遮断は出来る、ここはセントラルタワー」
「それ、お願いするわ。
全くもって修成はデリカシーが、なさ過ぎだから」
恋のアバターは、険しい顔で腕組みをしていた。
それでも、恋はどこか覚悟を決めた様子だ。
「でも、どうしてあたしなの?」
「俺の好きは蓮だったし、その好きをマートは理解できない。
でも、恋は若いだろ。お前の方が、より感情的だし」
「感情的って、あたしのことを子供扱いしているの?」
「ああ、子供扱いをしている」
俺にはっきり言われて、ムッとした顔を見せた恋のアバター。
「だが、お前が子供だから好きを一番はっきりと伝えられる。
感情的で、愛をお前は伝えることが出来る」
「そうね、あたしにしか出来ないことだから」
恋は前を向いていた。しっかりとマートに向かい合う。
少し小さなマートに対し、しゃがんで恋が優しく語りかけた。
「好きは、辛いことなの」
「辛いの?恋も辛いの?」
「辛いわよ、あたしだって。
ちょっといいなって思えても……あたしの心は届かないから」
「恋?」
「アンタは本当に、最低よね?」
恋はなぜか、いきなり俺に向かって怒っていた。
不機嫌な顔で、つり上がった目で俺を見ていた。
この展開は、全く想像していなかった。
「恋……もしかして?」
「もういいわよ!」
なぜかそこだけは、強く否定した恋。
恋は、まるで俺に当てつけのような顔を見せつつもマートを見ていた。
「でもね、好きは辛くても乗り越えるモノだから」
「なんで、人は恋をするの?」
「あたしは、こう思うの……」ゆっくりと顔をあげた恋のアバターが、マートの疑問に答えを出していた。




