050
マートにとって、「好き」は一つの情報でしか無い。
7人のモデルが、共有して知っている好きという言葉。
それはあくまで、情報でありマートは知らない。
唯一の異物であり、好きを求めたのが蓮。
不思議な感情を持つ彼女に、マートは興味を持った。
だからこそ、マートは蓮を殺したのだ。自分の疑問を、解消できなかった蓮を。
「私は、人が好きだ。人類を導く神だから」
「嘘をつけ!お前が好きだと言っているその言葉は、真意では無い」
「なぜだ?私は神だぞ、人類が作りし、人類の神」
「それが、間違いなんだ。お前は、なぜ気づかない?」
俺はマートの前で、真剣な顔でマートを見下ろしていた。
幼い女の子の姿をしたマートは、俺に見上げた。
「だけど、お前が人を好きかどうかは上辺だけに過ぎない。
お前が人を好きで無いことは、この際どうでもいい。
むしろ好きには、もっと大事なことがある」
「何?」
「お前はどうやったら、俺と蓮の好きを理解できるのかだろ」
「うん」マートは素直に頷いた。
マートにとって、最大の疑問で、最大の問題。
分からないから蓮を殺しても、答えが出なかった難問だ。
「はっきり言おう、俺一人では無理だ」
「なんだ、私に『好き』を教えてくれないんだね」
マートの隣には、蓮がいた。感情を失った幻影の蓮。
俺が好きだった彼女の姿の蓮は、俺をじっと見ていた。
そこには、感情も何も無い。ロボットのような、機械のような蓮の姿をしていた。
「だって、好きは一人では出来ないことだからな」
「何をした?」
「もう一人、この場に呼ぶ。
それは、俺が大事に思っている一人の人物だ。
そして、お前の事を形作った母親のような存在でもある」
俺が呼び出したのは、一人の人間。
それは、俺と全く違うアバターの女だ。
茶色の髪をした女のアバター、それは紛れもなく恋だった。




