046
マート庁のビルだ。人工島アールで、中心にある建物。
後ろには、巨大なセントラルタワーがそびえ立つ。
俺の番号は、既にレッドナンバーに書き換わっていた。
俺だけじゃない、マートは全ての人間をレッドナンバーにしていた。
そんなレッドナンバーの状態で、この職場に帰還するとは思わなかった。
このビルで行なった俺の仕事は、レッドナンバーの消滅だ。
それが、レッドナンバーになって俺がマート庁に来るとは皮肉だ。
俺はそれでも、裏口からラボに潜入した。
監視カメラでは、マートは俺たちを見ているだろう。
だけど、ドローンや防衛システムの攻撃を俺たちは受けない。
迂回したこともあり、俺たちは少し時間がかかった。
それでも、俺はラボにようやく辿り着いた。
「待っていたよ、少年」
白衣の廻沢が、俺をいつも通り出迎えた。
一緒にいるのは、気弱な堀合。
いつも通りの開発部の二人組に、もう一人の人間がいた。
この世界では珍しい老人の白衣男……打越教授も揃っていた。
「開発は、成功したのか?」
「打越教授の応援もあった」
「アップデートの再データも構築が終わった」
「二人とも感謝する」
マートに会う、それだけでも大変なことだ。
だけど、俺の失敗を挽回する為に多くの人間が動いていた。
廻沢も、打越教授も、他のラボの人間も。
「それは、世界の命運を君に託していいのかい?」
「託すしか無いだろ。というより、俺に託させてくれ。
セントラルタワーの壁を壊さないと、マートに会うことが出来ない。
マートの好きを、俺はようやく説明できるところまで来た」
「おおつまりは、恋ちゃんを犠牲にしない選択を選んだのね」
「当たり前だ!マートの暴走求めて、アップデートを今度こそ完成させる」
俺は鼻息荒く、言い放った。
だけど、廻沢が首をかしげた。
「でも、ダメならばそのまま恋の事を……」
「絶対に失敗しない。失敗させない。
これは俺の問題でもあるんだ、俺のけじめの問題でも……」
「言うねぇ」
「俺は蓮の好きに対する解を、まだ出していない。
今度こそ、俺はマート……蓮にもしっかり言う!」
「あなたは、本当にそれでいいの?」
そんな俺の後ろから、恋が心配そうな顔を見せた。
「大丈夫だ。俺は全ての決意を固めた。
過去の俺は自信が無かった、人を幸せにすると言うこと。
結婚をして、一人の女を妻にする責任を」
「結婚?」驚いた顔を見せた廻沢。
口にした俺は、少し照れていた。
「だけど、今の俺には覚悟が出来た。
愛する人を、幸せにする覚悟が俺にはある」
「言い切るねぇ、少年」
「少年じゃ無い、俺は……」
「じゃあ、修成」上目遣いで、なぜか恋が俺を見てきた。
そのまま、俺に対して聞いてきたことがあった。
「あなたは、今一番誰を愛しているの?」
恋の問いに、俺は数秒の間を開けた。
そして、俺は口を開いた。
「俺は、今一番愛しているのは……」
俺が出した名前を聞いて、廻沢と恋は思わず口を開けて驚いていた。




