038
蓮は、マートの監視をしていた。
マート庁で、唯一選ばれたモデリングの人間の一人。
彼女はノーマルナンバーで、マートに殺されてしまった。
だけど、俺は蓮のことをよく知っていた。当然、俺は蓮の彼氏なのだから。
「彼女は、本当にマートを寵愛していた。
蓮にとって、マートはかわいい子供のような存在だ」
「マートを好きな人物……彼女を採用したのはそれが理由だ。
そしてマートも、蓮の事を気にかけていたようじゃ。
マートにとっても、蓮は大事な存在だったようじゃな」
「それが『好き』を知りたい……に繋がっているのか?」
「マートの中には、世界の全ての情報がある。
歴史、地理、様々な言語、高速処理の計算。
それでも人間的な感情を理解するのは、システム上には組み込んでいない」
「まあ、かなり厄介な問題を残したけどな」
俺は首を横に捻っていた。
マートは、既にアップデートを拒絶していた。
今度も、上手くいく方法はないしさらに警戒してくるだろう。
だからこそ、マートに『好き』の意味を説く必要があるのだ。
「マートには、蓮の面影が残っている。
だから俺は、マートを救うと俺は決めたんだ。
そのために、好きを……調べ回っていた。そして、答えを見つけることが出来た」
「なるほど、君の中に答えはあるのですかな?」
「見つけてはいる。だが俺には、まだ迷いがある。
あのとき失敗した俺が、二度と失敗しないように俺はやるべきけじめがある」
「けじめ?」
「蓮を真剣に愛せなかった、俺のけじめだ」
俺は、はっきりと言い放った。
蓮を救えなかった自分、それはあの日の出来事からだ。
あの日、俺は出来なかったことが俺の心残りとして残っていた。
「おそらくそれが、蓮の記憶から呼び出したマートの好き……ということだから」
そんな俺は、あることを思い出していた。




