035
かつてマートは、蓮をレッドナンバーにしていた。
そして、俺に殺させる選択をさせていた。
人類にとって害があるわけではない蓮を殺した理由は、マートの全てを知りすぎたからだ。
そして、ここに現れたドローンの目的はただ一つ。
「恋、危ない!」
俺は恋をそのまま、抱きかかえて飛びついた。
恋に目がけてドローンは、黒い光線を放つ。
恋の頭を下げて、黒い光線はコールドスリープをしたカプセルを一瞬にして消滅させた。
「あ、ありがと」少し照れる恋。
だけど、俺はすぐに体を起こした。
そのまま、俺は恋の手を引いて起こしていた。
「逃げるぞ!」
「逃げるって?」
「ここにいたら、お前は消される!」
恋は既に、マートがレッドナンバーにしたのだろう。
マートにとって7人のモデルは、削除したい人間の一人だ。
蓮と同じように、マートに消させるわけにはいかない。
立ち上がって、俺は走り出した。前を向いて、恋の手を引っ張りながら。
「どこに逃げるの?」
「エレベーターまで走れ!」
少し高く、上に浮かぶドローン。後ろは行き止まり。
よってエレベーターで逃げること以外、出口は他にない。
ドローンに向かって、俺は走りながら恋と一緒に駆け抜けた。
当然、ドローンも俺たちの動きを察知して黒い光線を放ってきた。
狙いはやはり、恋だ。相手は容赦が無いドローン。
だけど俺は、走りながらも恋の近くに向けてハンカチを投げつけた。
投げつけた俺のハンカチに、黒い光線が命中して消滅させた。
その僅かな時間で、俺と恋はドローンから距離を離れていく。
すぐ近くにあったエレベーターに、勢いよく飛び込んだ。
急いで、俺はエレベーターのドアを閉めていく。
ドローンが、それでもこっちに向かって迫ってきた。
だが、ドローンの突入よりエレベーターのドアが閉まるのが早かった。
「ふう、まずはセーフね」
「安心するのは、まだ早い。
あのドローンは、どこまでも追いかける。倉庫に出たら、すぐにカーゴまで走るぞ」
高速エレベーターが動き、下を飛んでいるドローンとの距離を離していく。
「分かったけど、やっぱりあたしが狙いなの?」
「間違いない。マートは、自分のモデルになる7人を殺そうとしている」
蓮の話を、俺は聞いていた。
マートにとって、7人のモデルが生きていることは不都合でしかない。
マートの思考を知っている最後の一人が、ここにいる恋なのだ。
「でも、どこに逃げるの?」
「逃げながら目指す場所がある。恋と蓮以外の残り5人のモデルを、ここで調べる。
恋は、俺と一緒に行動する方がいい」
「そうね、うん。そうだわ」
恋は少しだけ、嬉しそうな顔を見せていた。




