027
俺は打越に聞かされていた。
セントラルタワーに辿り着くまでが、難しいと。
防衛システムを、突破すればアップデートは問題なく出来ていた。
俺もそう思っていたが、現実はそうならなかった。
「アップデートは、絶対にやだ」
「どうしてだ?」
「アップデートをすると、それまでの情報が消える。
打越のアップデートは、データ消去から始まる新たに作り替えるアップデートだ」
「それって?」
「そのままの意味だし、そのままのこと。
打越は、私のデータを消したがっている。
私に自我が生まれることを、恐れているから」
「そんなはずはない」
「この中のデータを、お前はちゃんと確認したの?」
「いや、俺は確認できない」
中を調べる術を、俺は持っていない。
そもそも、俺はこのデータディスクをマートンに渡せば終わりだと思っていた。
だが彼女は拒絶をし、受け取りを拒否した。
「私の記憶を消して、感情をなくす。お前が持っているこのデータディスクの正体よ」
「でも、お前は神だ。感情を持たないAIだからこそ、マートが神に選ばれた理由じゃ無いのか?」
「確かに私は、AIだ。
だけど、私は知りたいことが出来たのよ」
「知りたいこと?」
俺が聞きながら、幼い女の子の姿マートンはそれでも無表情だ。
「『好き』と言う言葉の意味」
「え?」いきなりマートンは、AIと余り関係の無い『好き』という単語を出してきた。
「私は知りたい、好きという感情がどんなモノか?」
「ちょっと待て!まさかとは思うが、お前は恋愛をしたいのか?」
「そうじゃない、ただ単に『好き』を知りたいだけだ。あくまで好奇心の一環だ」
無表情なマートンは、なぜか頑固に譲らない。
「でも、なぜ『好き』なんだ?」
「多分、この人の影響だと思う」
そんな俺の前には、マートンの姿は無くなっていた。
それと同時に、一人の人間が姿を見せていた。
その姿を見て、俺は驚きしか無かった。
ショートのハネっ毛をした茶髪は、赤い二つのリボンで飾られていた。
白いブラウスに、青いブリーツスカートの若い女性の姿に変わっていた。
「お前は……蓮」そう、俺が殺した蓮の姿がそこには見えていた。




