026
高速エレベーターが登った先は、不思議な広場だった。
そして、俺の体もドローンから変わっていた。
俺はマートンのアプリで作った、自分のアバターに変わっていた。
アバターで作ったのは、同性の男だ。
自分の体をデフォルメした、つまらないアバター。
サラサラの単発黒髪、着ている服は黒のジャンパーと長いズボン。
「うわ、つまんないアバター」
「うっさい」ナビゲーター役の廻沢に、俺は突っ込んでいた。
アバターから見えるのは、真っ白い部屋。
背後には俺が乗ってきたエレベーターが見えて、奥にはベッドが見えた。
「あれは?」俺はベッドに向かうと、一人の人間が寝ていた。
そして、俺が近づくと真っ白な目を開いた。
大きな瞳と、童顔。
それは紛れもない『マートン』のナビゲートアイコンでもある『マートン』だ。
着ている服も、七色に見えるワンピースだ。
「本物のマートンだ」
「なんだ、お前?」
「俺は、ブラックナンバーの……」
「8929314847、知っている。碑文谷 修成か?」
「やっぱり分かるのか?」だけど、俺が見ている視覚情報に彼女の番号は無い。
名前の表記もされていないが、コイツは一目で分かった。
「お前がマートか?」
「本来のマートは情報体、だからマートに体は存在しない」
「そこにいるお前は何だ?」
「情報体を繋ぐツールの一つ、お前達マート庁で『マートン』というもの」
確かにマートンのアプリのナビゲーターと、全く同じ姿、形をしていた。
その姿はよく見ているし、駅前に銅像が建つほどだ。
「こんな所に何しに来た、8929314847?」
「マートのアップデートを、しに来た」
そう告げて、取り出したのは一枚のディスク。
アップデートのデータディスクとして、打越教授からアバターで受け取っていた。
このアップデートディスクを渡して起動すれば、俺の任務は終わり。そう思っていた。
「やだ」マートンは、ボソリと否定した。
呟いたマートンは、うつむいていた。
「やだって?」
「嫌なモノは嫌だ。お前は、どうせ打越にそそのかされてきたんだろう」
ダダをこねる幼い女の子の姿が、俺の目の前に見えていた。
口を尖らせて、そっぽを向いていた。
俺はそんな女の子を見ながら、アバターの頭をかいていた。




