023
恋は研究所のそばで、眠っていた。
デスクに頭をつけて、かわいらしい寝息を立てて眠っていた。
強い睡眠作用のある薬を飲んでいるので、しばらく起きそうもない。
そんな中でも、俺は怪しい顔の老人を見ていた。
「碑文谷君、君はアメミットを使っているのだよね?」
「はい。俺は、ブラックナンバーですから」
「昔は、レッドナンバーは普通に殺していた。
君は、その頃と同じように拳銃を持っているんじゃ無いのか?」
「ああ」ズボンに、拳銃を隠し持っていた。
軽い銃だけど、ブラックナンバーは武器の所有が認められていた。
昔の拳銃よりずっと軽いけど、人を殺すには充分だ。
「わしを、殺すつもりか?」
「事と次第によってはな」
恋に睡眠薬を飲ませた人物は、信用ならない。
それでも、俺は打越教授から引き出す情報はあった。
「まあ、殺されても構わぬ。長く生きすぎたわしも、老い先は短い。
殺されて人生を終わらせるのも、又一興。
わし以外……マートを作った研究者は皆死んでしまったからな」
「打越教授マートを作ったのは、本当か?」
「ああ、本当だとも。アメミットの仕組みも、わしらが考えた」
「遠隔ドローンか?」
「目の前で血を見ると、人の感情が大きく変わる。
興奮、狂気、不安……様々な感情が起ることで人は冷静でいられなくなる。
だから、人の手を煩わせない兵器が必要だった」
「それがアメミットか?」俺の言葉に、打越教授は頷いた。
「マートはその仕組みを作り、さらに罪悪感を和らげるためにADLを作った。これが今の君の仕事導具。
だがアメミットには、もう一つの機能がついているのを誰も知らない。
管轄しているマート庁でも、知っているのはごく一部だ」
「え?」俺は思わず驚いていた。
それと同時に、マートは助手から渡されたタブレットを操作した。
操作して、タブレットを見て一つ頷いた。
「やっぱりそうだ。碑文谷……君はエースパイロットだね。
スコアが、全ブラックナンバーの中で一番高い」
「それがどうした?」
「この仕事は、秘密裏に君に頼もうと思う。
マート庁でも、おそらく出来る人間は君しかいないと思う」
「何を企んでいる?」
「君は、マートが狂っていると思うかい?」
いきなり、打越教授は俺に対してマートの事を問いただしてきた。
「狂っている?」
「そう、マートは壊れているんだよ。だから君にお願いしたい。
マートのアップデートに、是非とも手を貸して欲しい。
ブラックナンバーである君は、『マートン』のアプリがあるだろう」
打越教授は、俺に一つの願いを頼んできた。




