017
俺は急いで、自分の部屋に戻った。
電話の主を見て、すぐさま自分のマンションの部屋に戻っていた。
恋が綺麗に片付けたリビングで、電話を取った。
それは上司……ジョンストン課長からのテレビ電話だった。
スマホの画面に見えたのは、マート庁の事務所だ。
金髪の面長の顔が、どアップで映っていた。
俺も、スマホのテレビ電話に参加していた。
「はい、お疲れ様です。課長」
「ああ、休暇中にわざわざ電話して済まないな」
「どうしました?」
「昼間のデパートでの名倉発見は、本当に見事だったな」
「あ、ありがとうございます」
ジョンストン課長のねぎらいの言葉に、俺は恐縮した。
頭を下げて、少し照れた顔を見せていた。
無論、ジョンストン課長にも俺の顔のアップを見ているだろう。
「で、それでだ」
ジョンストン課長の顔が、曇っていた。
声のトーンも、自然と下がっていく。
「柚木から映像を見させてもらったのだが、あの人質の女……あれはなんだ?」
「あれは……」間違いなく恋の事を、やはり指摘していた。
柚木のドローンから、映像もはっきり出てきた。
しかも、俺は有給をわざわざ使ってデパートで一緒にいた。
当然のことながら、ジョンストン課長は気になるだろうな。
「知り合いの娘です」俺は、直前で誤魔化した。
「知り合い?お前にそんな知り合いがいたのか?
昼間のデパートで、何をしていた?」
「デパートだから、ショッピングですよ。
欲しかったエプロンを、あの子にせがまれてね」
これは本当の言葉だ。
だけど、ジョンストン課長はじっと俺を見ていた。
何か俺の事を、探っているかのようだ。
「何かあるんですか?」
「いや、特にないし。彼女の番号も、レッドでは無い。
こちらからは、どうこうするつもりはない。ないが……」
「ん?」
「クイックナンバーには、気をつけろよ。
彼女に与えた番号は……クイックナンバーだろう?」
ジョンストン課長は、なんでもお見通しだ。
恋の数字の事も、流石に分かっていた。
「ええ、バレていましたか」
「俺は何年、ブラックをしていると思うんだ?」
「確かにお見通しですね。それで、上司……ジョンストン課長」
「どうした?」
「マートを作った打越教授は……生きているのですか?」
俺の言葉に、ジョンストン課長は首を捻っていた。
考えるような仕草を見せて、口を開いた。
「当たり前だ、何を言っている?アール大学の研究室で、今も大学教授をされているぞ」
「そ、そうですか……」
俺は畏まって、ジョンストン課長の言葉をじっくり聞いていた。
「ああ、詳しくはアール大学に行くといい。
そういえば、堀合がアール大学から来ていたな」
「そうですか、ありがとうございます」
俺はジョンストン課長に感謝して、そのままテレビ電話を解除した。
解除しながら、俺は一人だけの部屋で考えていた。
(マズいな、恋の情報が既にマート庁に出回っているな)
俺は難しい顔で、そんなことを考えながら姉貴の部屋にゆっくり戻っていった。




