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数字の神が支配する世界  作者: 葉月 優奈
二話:神を作りし若人
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16/56

016

夕方、俺は姉貴の家に来ていた。

姉貴のマンションは、俺のいる寮の上の階だ。

マート庁で勤務しているわけではない、民間人の姉貴だ。

俺がブラックナンバーなので家族は、共同で住むことが出来た。


最も、姉貴の仕事の影響でマンションは別々の部屋にしていた。

姉貴の部屋に入った恋は、エプロン姿で早速ハタキを持っていた。


恋が着ているエプロンは、俺はデパートで買わされていた。

赤い花柄のエプロンを、恋はえらく気に入っていた。

そのまま、姉貴の掃除も無理矢理掃除した潔癖症の恋。


数分後綺麗になったフローリングに片付いた部屋を見て、姉貴は感心していた。

「いいお嫁さんになるわ、恋ちゃんは」

「これぐらい当然です。

なにせあたしのいた時代では、感染症が流行っていて清潔に保たないといけないしね」

この部屋には、なぜかゆりかごがあった。

赤ん坊用のゆりかごよりも、はるかに大きなゆりがご。

大人用の大きなゆりかごに座る姉貴に、エプロン姿で立ったままの恋は堂々と答えた。

白いガウンを着ていた姉貴は、完全にくつろぎモードだ。


「そうだぞ、恋はお客さんだから」

「ねえ、今の世界には、感染症はないの?」

「さあ、な。俺は何も知らない」

「お姉ちゃんも、知らないわよ」姉も俺もほぼ同時に、首を横に振っていた。


「ただ、全ての玄関に入る前に霧みたいなのをかかったでしょ」

「うん、ドアを開けるとかかった変な霧」

「あれで、消毒をしているから感染症が無いみたいよ」

「へぇー」妙に納得している恋。


「しかし、本当に過去から来たの?恋ちゃんは」

「はい、100年眠っていました。私の病気を治すために」

「そんなに大変なの?」

「ええ、世界中大騒ぎだった……みたい」

恋はたどたどしい記憶で、喋っていた。

恋と姉貴の会話をソファーの反対側で、俺は聞いていた。


「でも、姉貴。あの男……浜中……じゃなくて名倉のことだけど」

「いいのよ、まさかお姉ちゃんの彼氏が番号詐欺師だったとはね」

姉貴は、そのままテーブルにある大きなビールを飲んでいた。

この世界にもビールは存在し、嗜好品として前の世紀からも残っていた。


「消滅したことに、後悔していないか?」

「してないわよ、だってレッドナンバーでしょ。

消滅させたのは……おそらくあのドローンだとユズ君だよね」

「ああ」姉貴は、俺の相棒を……柚木を『ユズ君』と呼ぶ程に仲がいい。

実はこの二人は、つきあっているけど……結婚はしていない。


「お姉ちゃんは、グリーンナンバーじゃなかったら結婚していたけどね」

「ユズの事が、好きなのか?」

「まあ、好きよ」明らかに、恋する照れた顔の姉貴。

それでも、彼女はグリーンナンバー。身勝手な結婚を、マートから許されていない。


グリーンナンバーは、子供を産むことが仕事だ。

女は『母体士』、男は『精槍師』と言われている彼らは、優れた能力を持っていた。

人類として優れた遺伝子情報のあるグリーンナンバーは、マートから子供を産む事を命じられていた。

そして、優れた遺伝子を残すことで人類を進化させていく。

それが、グリーンナンバーの仕事だ。


「でも、なんでそんな好きな人がいるのに他の人とデートするの?」

「え?」恋の鋭い質問に、姉貴は困った顔を見せた。

それでも、穏やかな顔を見せて恋を見ていた。


(マート)が選んだことだから」

姉貴は、娘に語るように恋に優しく伝えていた。

だけど、恋は口を開いた。尖らせて、眉間にしわを寄せて。


「そんなの、おかしいでしょ。狂っているわ!」

何も知らない恋は、姉貴の部屋で叫んでいた。

だが、空気を変えるためか俺のスマホが突然鳴りだした。

着信を見て、俺は急いで立ち上がっていた。


「悪い、少し大事な話があるから家に戻る」

俺は急いで、姉貴の部屋から出て行った。叫んだ恋と姉貴を、その場に残したまま。



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