表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
数字の神が支配する世界  作者: 葉月 優奈
一話:百年眠る少女
PR
12/56

012

朝の食事を済まして、俺はデパートに来ていた。

俺は会社を休んで、恋を引き連れて。

アール市街地は、大陸にあった大都市と違わぬ大繁栄をしていた。

島が出来て僅か三、四十年の間で人工島アールは大きな進歩がした。


その中には、大陸から持ち込まれたデパートも存在していた。

大きなデパートを俺は、恋と一緒に歩いていた。


今朝、俺は恋の服を買い与えた。

水色のブラウスに、赤のシャツ。それと白いミニスカート。

ちなみにこれは、姉の家から持ってきたものだ。


「この服も、なかなかかわいいわね」

「ああ、似合っている」確かに『打越 恋』は、かわいい少女だ。

見た目はかなり年下のようだけど、元気な少女はデパートの広い廊下を歩きながらクルリと回っていた。

ズルいぞ、見た目以上に仕草もかわいいじゃないか。

デパートは、余り人がいない。平日なので、客層は主婦ぐらいだ。


「ねえ、どこに行くの?」

「これから、お前の番号を習得しに行く」

「番号の習得?」

「まあ、アールチップを今から埋めることは出来ないけど……番号だけを与えてもらう場所がここにはある」

「そうなの……」

「ああ、人呼んで『クイックナンバー』」

「『クイックナンバー』?」

「見つけたぞ」

そういいながら、俺が指さしたのは『クイックナンバー』と書かれた一台の機械。

自動印刷機のような機械が、店の片隅に置かれていた。


「あれ、プリクラ?」

「なんだ、プリクラって?」

「かわいい写真を撮るやつ。ゲーセンにあるの、知らない?ゲームやる場所」

「ゲームも写真も、スマホで出来るだろ」

「まあ、そうなんだけどね。あたしの時代も、そうだったし」

そういいながら俺は、クイックナンバーの機械に近づいた。

平日の昼間、当然『クイックナンバー』の所に人が入っていない。


「じゃあ、入るぞ」

「二人で入るの?」

「操作がわかんないだろうし、俺が操作しないといけないから」

俺はそのまま、『クイックナンバー』の中に入った。

印刷機のような機械と、モニターが中に見えた。

俺の隣に、恋が入り込んできた。


一応『クイックナンバー』の内部には、二人座りもなんとか可能だ。

それでも、筋肉質で大きな俺の体のせいで小さな体の恋が窮屈そうだ。


「大丈夫か?」

「もうちょい、そっちにいける?」

「ああ、ギリギリまで」俺は壁スレスレまで体を寄せた。

だけど、恋はやはり窮屈だ。当たり前だけど基本は一人座りが基本。


モニターでは、ナビゲーターが出てきた。

女性の従業員であるナビゲーターが、案内をしていた。


「この機械は、番号の一定時間得るものだ。

だけど、お前には番号が無い。ない場合は、臨時番号というモノがある」

「臨時番号?」

「記憶を失って番号が分からなくなったり、番号が最初から無かったりした場合に番号を得る方法だ。

そのために、最初の操作が大事なんだ」

「で、どうするの?」

「モニターのこれを、タップして」

狭い機械の中で、俺の体が恋に触れた。

恋は、それでも俺の腕をじっと見ていた。


「太い……腕」

「な、何を見ているんだ?」言われて、照れてしまう俺。

まさか、腕を褒められるとは思わなかった。

それでも、俺は慣れた手つきで操作を続けた。


「『0000000000001』って入れてみて」

「うん、入れてみるね」

タッチパネルの操作は、かなりなれている恋。

そのまま俺の指示通りに入力をしたら、モニターが切り替わった。


「指示を無視して、番号無しと設定して……その後は?」

「写真かな?」

「そう、顔認証になる」それと同時に、俺は立ち上がった。

立ち上がったが、『クイックナンバー』の天井で頭をぶつけた。


「いたっ」

「どうしたの?」

「頭ぶつけるから」

「何も考えずに、入るからよ」

そうだ、俺は奥だった。反対側に壁があって出ることが出来ない。

それでも何とか俺は、大きな体を外に出そうとした。

間もなく、モニター画面には写真撮影が始まっていた。

俺がここに残っていては、恋が写真を撮れない。


「急いで出るから」

「窮屈だって……」

体を横に曲げ、恋の足に狭い体を乗せながら……何とか『クイックナンバー』から脱出をした。

機械の外を出た俺は、周囲を見回した。

変な出方をしたモノで、周りの客にチラリと見えてしまう。


「ふう、後は大丈夫かな?」

『クイックナンバー』の中で、俺は恋の顔を見守っていた。

廊下の周囲を見ると、アクセサリーを売っている店が見えた。


(新番号を得たら、なんか買ってやるか)

などと思いながら、俺は周囲に目を配った。

そこで偶然歩いている二人組を、俺は見かけてしまった。


(あれは……姉貴……それともう一人は男か。男?あの男どこかで)

見えたカップルは、姉貴とどこかで見た事のある男だ。

だけど、マート庁にいる人間……ではない。

柚木も、ジョンストン課長でも……ラボの人間でも無い。

思い当たるマート庁の人間を、考えていると一人の人間を思い出した。


(あれって、もしかして?)

スマホを見て、ジョンストン課長からのメールを見ていた。

そこに添付された手配書を見ると、一人の人間と合致した。


「名倉……昭」

俺は姉貴と一緒に歩く男を見て、体を震わせて唇をかみしめた。

俺の後ろでは、『クイックナンバー』の機械から恋が出てきていた。

新しい番号証を、手にしながら。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ