011
マート庁の社員寮のマンションの中も、流石に防犯カメラはない。
部屋に入れば、レンのカメラを気にしないでくつろぐことが出来た。
そして、部屋の中に入ったレンが一言。
「汚い」レンが、率直に乾燥を言う。
リビングでは、物が散乱していた。
大きなモニターにパソコン、エアコンとソファー。
この部屋は、一人暮らしの部屋だ。
奥にはもう一つの部屋があるし、すぐ左にもドアが見えた。
「そうか?」
「あそこの掃除機ロボットも、ゴミがいっぱいで動いていないでしょ。
あたしがきちんと、掃除するから」
レンは不機嫌な顔で、キッチンに向かった。
そのまま、雑巾とバケツを持ってきた。
「いいよ、お客さんだろ」
「空気もちょっと臭いし、空気清浄機の掃除していないでしょ。エアコンも」
「だから……」
「いいから、どいてて。修成は、その辺のリビングでくつろいでいてよ」
レンはテキパキと、掃除をしていた。
真剣な顔で、次々と掃除をしていく。
動かなくなった掃除機ロボットも、掃除し治して再び稼働していた。
「あの……レンさん」
それでも、レンの掃除は手際がいい。手際の良さに、見とれてしまうほどだ。
「この家、一人で暮らしているの?」
ハタキを持ったレンが、声をかけてきた。
「まあ、一人だな。姉貴は、このマンションの二十八階で暮らしているけど」
「お姉さんは、料理できるの?」
「たまに一緒に、飯を食うぐらいかな。ちなみにどっちも、家事は苦手だ」
「未来人だから、便利になりすぎたから?」
「まあ、そんなところかな。って未来人じゃ無いぞ。俺は」
俺は突っ込んだが、掃除を繰り返すレン。
その間に、俺はスマホでメッセージを送っていた。
【明日は、マート庁を休む】……と。
メールを打ちながら、スマホを操作していた。
操作をしながらも、掃除をしているレンを見ていた。
(アイツを、どうにかしないとな)
コールドスリープで起きた少女の『レン』。
100年以上眠って、目を覚ました彼女には番号が無い。
番号が無い彼女を、マートは間違いなく探しているだろう。
廻沢の言うとおりなら、マート庁は番号の無い彼女を処分してしまう。
(とりあえず、有給もあるし明日は休むとして……番号も習得させないとな。
番号が無ければ、何も出来ないし。
コールドスリープのことは、秘密にしておいて番号の習得をしたら……後は)
そうだ、レンのことを何も分からない。
もう少し、レンの情報を得る必要があるな。
スマホを見ながらも、顔を上げた。
掃除を楽しそうにしているレンを見ていると、昔の彼女……蓮に重なって見えた。
ああ、蓮もそういえば俺の部屋でよく掃除をしてくれたな。
「どうしたの?」
「いや、なに……これからレンのことを、真面目に決めないと行けないしな。
流石に、男と二人暮らしをするのもマズイだろうし」
「え?あ、あ……そ、そうね」
監視カメラもあるし、ここはマート庁の宿舎だ。
いや、番号が無いからどこに行ってもドローンに狙われて消されてしまう。
「寝室も、あるんだっけ?」
「奥に、ある」
「じゃあ、あたしここのソファーでいいや」
「いや、流石に客人にそれはまずいし……俺がソファーで……」
「いいわよ。男のベッドに、このあたしが寝れるわけ無いじゃない」
照れくさそうなレンが、掃除を続けた。
それでも、俺は話を続けていた。
「それよりも、感染症を治すためにコールドスリープをしたって言っていたよな」
「うん、それは間違いない」
「二十一世紀って、そんなに感染症が酷かったのか?」
「うん、あたしは2022年までしか知らないけど……あの頃は感染症が流行っていたわね。
世界的に、パンデミックというかそう言うので……」
「100年前の感染症?どんな感染症なんだ?」
「えーと、名前は……何だっけ?」
レンは思いだそうとして、掃除の手が止まった。
そのまま考えること数秒、全く関係の無い言葉が出てきた。
「そう、あたしは探すモノがあったのよ。
あたしの感染症を治すために……一人の人間を探さないといけなかったの」
「ほう、それは保護者か?」
「うん、保護者」
百年前の保護者か、流石に生きていないかもしれない。
だけど、それでもレンの関係者を探すには充分だ。
「それで名前は?」
「えーと……その……ここまで出ているんだけどね。うーん、あっ!思い出した」
「おお、で、名前は?」
「打越教授、アメリカのどっかの大学教授よ」
「打越教授って……まさか神を生み出した科学者の?」
「そう、あたしは『打越 恋』という名前だから」
恋の名字を聞いて、俺は驚きしか無かった。




