あたしは、嫌だ。
「あたしは、嫌だ」
嫌だ。復讐に身を投げるのも。快楽のためだけに力に溺れるのも。
やっぱり、いや。
「ほう。自分を捨てた両親を恨まないと言うのか?」
「悲しいよ? 悲しかったよ? だけど、復讐とかは、やっぱり違うもの」
物語のイリスがどう思うかとかはわからない。でも、あたしはやっぱり復讐はしたくないなってそう思う。
それに。
ごめんシヴァ。
あなたがイリスの父デウス・マキナ・アリアンロッドと対立したのだろうと言うのもわかる。
だって、それもあたしが考えた設定なんだろうから。
時期はたぶんずれてるし詳しい経緯は違ってるかもしれないけどこれは物語の強制力に依るものなのだろう、シヴァとデウスは対立し負けたシヴァが堕とされたのは間違いないのだろう。だから。
「あなたは自分の恨みをあたしにも重ねてるの?」
「復讐したいのはあなた、破壊神シヴァ自身ではないの?」
「あたしを見つけて喜んだ気持ちはわかるよ? でも、あたしはあなたじゃないもの。復讐とかするんじゃなく、逆にあの人たちを救うことで自分の力を見せつけてあげるよ。きっとその方が気持ちいいもの」
うん。
どうせならね?
「そうか。ならば、お前はここで死ね! 我の駒にならないのであれば用は無い! ここで消し去ってやるわ!」
破壊神シヴァがその全身から吹き出す青白い炎に包まれた。
逆立っていた髪はいっそう燃え上がるようにゆらめき、見えざる手だけでなく実態を伴った腕が両肩にもう2本ずつ生える。
その手全てに三叉の槍を構えあたしを睨むその瞳。
室温はさらに上がり、空気が歪む。
ゆらゆらと陽炎のようにゆらめきながら一歩また一歩とこちらに進んできた。
あたしも自分の周囲にマナの膜を二重三重に被せる。そうやって身体守らないと焼け爛れてしまいそう。
マナの膜、そのレイヤーに絵を描くようにイリスの姿を描き、そしてそれをあたし自身と合成させる。
肉体強化、それも表面に特化した強化の魔法、マジカルレイヤー。
あたしのおはなしの設定だと、この魔法を使うことで人は魔王デルタのような精神生命体とでも互角に戦えるようになるのだ。
に、しても。
この熱だと流石にハルノブはやばいかな。
床に這いつくばっているハルノブ。魔族の丈夫な身体だけれどあれはまだ生身に近い。
デルタ、お願い。
あたしはそう心でデルタに語りかけるとクマぬいのデルタをハルノブに向かって投げた。
キュキュッと返事をしたデルタ、ハルノブの上に覆い被さって彼をカバーする。
これで少しは保つかな?
シヴァの見えざる手も全てが三叉の槍を持ったシルエットを保ちあたしに向かって伸びてくる。
絶え間なく突き刺すように、素早く伸びてくる槍。
バリアウォールを突き抜けあたしに刺さるその先端。
いくつもいくつも飛んでくるそれを振りはらい上に飛び上がり避けるも空中に追ってくるその槍を避けきれず。
両手でその見えざる手を払っているところに。
シヴァの実態を伴った腕の一本が伸び、その手にあった三叉の槍があたしの胸に突き刺さった。




