狂言回しの主人公。
「お前、まさかデウスの息子か?」
動きをとめそう言うシヴァ。
「わかるの?」
「ああ、見覚えがある。しかし……確か魔力特性値がゼロだと判定され地上に落とされたのではなかったか?」
はは。おっしゃる通りなんだけど。
「そうだね。特性値がゼロだって判定されて地上に落とされたんだよ」
「にしては、桁外れな魔力だな」
「はは。判定が違ってたんだろうね?」
「で、あるなら」
シヴァ、舌なめずりするようにねっとりとした眼をこちらに向ける。
「同志になれ」
は?
「天上界に復讐がしたいのだろう? 自分を堕とした両親を見返したいのだろう? わかるぞ?」
「ちょっと待って。どうしてそういう発想になるのさ!」
「私が手を貸してやろう。思う存分復讐をさせてやるぞ?」
「だから。どうして復讐とか言う話になるってのさ」
「悔しくはないか? 理不尽に己を地上に堕とした奴らを憎いとは思わなかったか? どうだ、力を使うのは楽しいだろう? 己の力を誇示するのは快感ではないか? で、あれば、だ」
仁王立ちになりこちらを見るシヴァ。声を一段と張り上げて。
「同志になれ。さすればこの世界の半分をくれてやろう」
ああ。
どこかで聞いたような誘惑の言葉。
何だか何もかもバカらしく思えてきて。
そうか。
この世界って、あたしの心の裏側の願望が現実になったものかもしれないな。
そう思えてきた。
理不尽は嫌い。
でもこの世界の主人公イリスをそんな理不尽な目に合わせるよう物語を考えたのはあたし、真希那であったあたし自身だ。
イリスはそんな理不尽な目にあっておきながら、自分の力に目覚め正義のために戦う。そんな運命で。
でも。
あたしはいいよ。落とされたことだってそれが既定路線だってわかってたし、おまけに実はチートな魔力が使える主人公だってことも知ってたし。でも。
もし何も知らないままのイリスだったらどうだろう?
あたしでさえ悲しくて悲しくて狂ってしまいそうになったほどだった両親からのお前はいらないということば。
何も知らないイリスの心の奥にはそんなトラウマが残らなかったって言えるだろうか?
復讐、って甘い言葉に、逆らえるだけの強固な意思を発揮できただろうか?
チートな力を使うのを、楽しいって、そう思ってしまわなかったろうか?
力を振り回すのを楽しみ、世界を二の次にしてしまわなかったと言えるだろうか?
わからない。
だって、あたしの考えたイリスは主人公なんだもの。
あたしの都合のいいように動く、狂言回しなんだもの。




