シヴァ。
「はは! たかだか魔族の王の分際でこの私に楯突くか!」
ゆっくりと立ち上がる男。その氣のゆらぎに寄ってたゆたゆと揺れるきなりな布を肩から掛けて。
手足に嵌められた無数のリングが金色に輝く。
それに伴い室温が急激に上がる!
「シヴァ様!」
端に控えていた従者らが懇願するように叫んだ。
「よい。其方らは部屋から出よ」
「しかし、シヴァ様を一人にするわけには」
「よいと言っている! 私がこの程度の魔族らに遅れを取ると思ったか!」
「はは!」
逃げるように部屋を出て扉を閉める従者らを眺めながら、
「ふん。思ったよりも部下想いなんだ。ならボクらも帰してくれるとありがたいんだけどな」
と、デルタ。
「ふははっ。ふざけたことを! まあいい。かかってくるがいい」
左手掌を上にむけ、そのままくいっと手前に振るシヴァ。
それを合図とばかりにデルタが突進した。
最初は互角にも見えた。
右手の熊掌を振り下ろすデルタ。それを右腕一本で防ぐと左手を突き出すシヴァ。
それを避け様回し蹴りを決めるデルタとバック転で避けるシヴァ。
そのまま数手攻防を続けた後。シヴァが右手に溜めたエネルギーの塊をデルタに向かって放った。
爆発的に膨らんだそのエネルギーの塊がデルタに触れるかいなかで弾ける!
壁まで吹き飛ばされるデルタに追撃、シヴァのその腕が幾つもにも増えそのすべてが伸びデルタの身体を突き刺した。
「かはっ」
通常で、あれば。
デルタの身体を構成するのはマナでありその損傷すら修復するのに数秒もかからない。魂はこの空間に存在する物質では無いから物理攻撃などダメージを負うことも本来はありえないのだけれど。
しかし。
シヴァの攻撃はそのデルタの魂にダメージを与えるものであった。
強制的に自分の土俵、次元に引きずり込むようにして。
デルタを壁に貼り付けた腕。それは現実世界とはまた切り離されたマナの見えざる手であったのだ。
吐血するデルタを見下ろすように宙に浮かぶシヴァ。
額の眼が金色の光を発し、その長めの頭髪が逆立つ。
肩からは無数の腕が伸び悪魔のようにも見えるそのすがたに。
見ているだけしかできなかたハルノブは自身の死を覚悟した。
「ふふ。面白そうなのがいるねぇ。でもこんな序盤で会えるなんて思わなかったよ。念のためにデルタには二つに分かれて貰っててよかったかな」
デルタの居た場所、その手前の空間がぐねんと歪む。
歪んだレンズのように周囲がぼやけて見えなければそんな空間の歪みなど感知は出来なかったろう、その歪みが消えた時そこには一人の少年の姿があった。
デルタの身体は黒い霧に還りそして普段のかわいらしいぬいぐるみの姿に戻る。
「ごめんなさいイリス。負けちゃった」
イリスの腕の中におさまったその熊ぬい。笑みをこぼし撫でてあげながら、
「うん。いいよ。あとは任せて」
と、そう慰める。
「おやおや。お前は何だ? どうやってここに来た? この部屋は侵入防止の結界を張り巡らせていた筈だがな。まさかそれをすべて突破してきたとでもいうのではあるまいな」
突然の乱入者に驚くシヴァに。
「ああ。此処に直接跳んできたからね」
と、イリスはこともなげに言った。




