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眷属。

「では君は全てを投げ出し逃げ出してきたという事なのかな?」


「申し訳ありません。拙者の力が及ぶ相手ではありませんでした」


 ボロボロの衣装を纏いそこにひれ伏すハルノブ。椅子にどっしりと座る男はそんなハルノブを上から下まで眺め。


「まあその姿を見れば君がボロボロに負けたのはわかるけれど。ふむ」


 顎に手を置き思案する男。


「だからといって自分だけ逃げ出してくるとは見下げたやつだ」


「このままおめおめとお館様にお仕えするのも申し訳なく……、拙者はこれでお(いとま)を頂きとう存じます」


 男の顔、その額に生えた第三の眼がぎろりと動く。


「私がそれを許すと思っているの?」


「しかし……、もともと拙者は期間雇用、現在の職務が終われば契約も終了となる筈でござった。これ以上職務の遂行が不可能である以上、お暇を頂くしか」


「ふっ。この私が、私の正体を知った人間をみすみす野に放つと本気で思ってた? おめでたいね。君さ、裏切るつもりならもっと上手くやらなきゃ。ここにわざわざ帰ってきたら無事には済まないって、考えなかったの?」


「裏切る、などと……」


「わかるよ。その相手がどんな相手なのか知らないけど君をみすみす逃すような真似する様にも思えないし。大方ここを探るのが目的だろ? なあ、そこの魔族よ」


 男の第三の眼はしっかりとハルノブの腰のクマバッチ、デルタを捕らえていた。


「そんなアクセサリーに化けても無駄さ。ハルノブの魔力紋に別の紋が被さっているのはわかってる」


 ぎろりと見開くその第三の眼から空気の、時空そのものにも感じる圧力がハルノブに襲いかかる。

 ドシャ

 そのまま潰れるように床に貼り付く身体をなんとか耐えながら、

「拙者はただ筋を通しておきたかっただけ。お館様の秘密など何も喋ってはおりませぬ!」

 そう訴える。

「じゃぁその魔族はなんだ? 明らかに異質なそれは!」

「こちらは……」


「もう、いいよ」

「デルタ様!」


 腰のクマバッチがフヨフヨと形を無くし、そのまま黒い霧となって舞い上がる。


 熊の意匠、そんな人型の魔人に変化したデルタ。今までの可愛らしい姿ではなく魔王然とした姿に変わった魔王デルタに、男も少しだけ怯んだように見える。


 ハルノブよりもさらに長身に、しかしどことなくハルノブに似ているその魔人の姿。

 頭には丸い耳、両手両足は毛むくじゃらな野獣の脚を思わせる。


「ボクは魔王。魔王デルタ。正当な先代魔王の魔王石継承者にしてこの世界の真の皇。ここには眷属であったハルノブの見届け人としてきただけなんだけどね? 何か文句がある?」


 シャキンと爪を伸ばし構えるデルタ。その目はじっと目の前の男の第三の眼を睨みつけていた。

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