ハルノブ。
「よろしいの、でござるか……?」
上目遣いにこちらを見るハルノブ。なんだかワンコみたいな目をしてる。
まあ根は悪い人じゃなさそうだしね。っていうかこの人は普通の人間の手には余る。
「その代わり。悪い雇い主とは手を切って。あんたの矜持だっていうなら聞き出すのは勘弁してあげる。だけど、必ずちゃんとしっかり手を切るのよ。それが条件」
「わかりました」
ハルノブはそのまま土下座をして額を地にこする。誠意だけは間違いないって感じるけど。
——いいの?
そう、デルタの声が聞こえてきた。念話。心に直接響いてくる。
——うん。その代わりデルタ小さくなってこの人について行ってくれる? ちゃんと悪いやつと縁を切れるか確認してきて。
まあ、当然そこはちゃんとしなきゃ、ね?
——りょうかいー。
デルタはそのぬいぐるみの体を一旦黒い霧に変え、そして2個の小さい子熊のブローチに変化する。
そのまま一個はあたしの胸元に、もう一個はハルノブの腰にくっついた。
「悪いけどボク君のこと信用しきれないから、ちゃんと悪いのと縁切れるかどうか確認しについて行くからね?」
ちょっと一瞬驚いたような顔をしたハルノブだったけど、そのまま目を閉じて再び開いた時、その目には覚悟が決まったとでもいうかのような光が見えた。
「承知いたしました。拙者の覚悟、見届けてくださいませ」
そういうと、すくっと立ち上がったハルノブ、一礼するとそのまま森の奥に消えて行った。
あたしは崩れた丸太小屋に残された悪いおじさんたちをとりあえず救助して縛り上げ、そして少しだけ回復魔法をかけて。
そのまままた空を飛び街まで戻る。
一応大黒屋に投げ文するのを忘れずに。(丸太小屋に誘拐犯の仲間がいるって、ね?)
まあこれでとりあえずは一段落。わるいおじさん達は自警団に任せておうちに帰る。
ふふ。
これで今夜はぐっすり眠れそうだ。あたしはこっそりとお屋敷に戻って。
「イリスさま!」
ベランダからお部屋に忍び込んだところでそう声をかけられた。
ってどうして? エオリア?
「エオリア!? どうして?」
薄暗い部屋の中、あたしのベッドの脇には心配そうな顔をしたエオリアが立っていた。
って、もしかしてずっと待ってたの? どうして……。
「誘拐事件のお話を聞いてからぼっちゃまの様子がおかしかったので心配だったのです。もしやと思ってお夜食を持ってお部屋を訪ねましたらもぬけのから。エオリア、生きた心地がしませんでした」
泣きそうな顔をしてそう話すエオリアに、あたしは抱きついて。
「心配かけてごめんね。大丈夫だから」
「もう。それにいくら女の子の格好がしたかったからと言って、そんなお姿で夜の街をご散歩なさるなんて! あなた様が誘拐されるようなことがあったらほんとどうしたら……。お願いです。気に入ったのならいくらでもお嬢様ごっこにお付き合いしますから、どうか一人で出歩かないでくださいまし……」
涙を流して訴えるエオリアをなんとか宥めベッドに入ったあたし。
はう。すっかり女の子の格好が気に入ったと思われてる?
まあ、それはそれでいいんだけども。




