ドラゴンオプスニル。
「で、あなた達はどこの誰の差金でこんなことしてるわけ?」
単刀直入に聞いてみる。
っていうか前のおじさん達は皆何かの契約魔術でもかかっているのか雇い主の名前だけは頑として漏らさなかった。
ううん、口を割らそうと圧を強めると、契約魔術によって心がプチンと潰れちゃう? そんな気配がしたので早々に諦めたのだ。
「お前はプチンと潰れちゃうような弱い心してなさそうだよね?」
隣でそうデルタが喋る。
人語を話すぬいぐるみに魔人武士はちょっと驚いたみたいな顔をしたけど、すぐに従順な表情に戻る。支配の魔法が効いてるみたい。
まあこうしているとイケメンに見えなくも無い。ほんと日本の武士のような佇まいのその魔人、長めの黒髪を後ろで束ねポニーテールにしてるけど、それがまあ結構似合っているのだ。
「拙者はアレクサンドロ・ハルノブ。ハリマの出でござる。今は各地を放浪しながら用心棒で日銭を稼ぐしがない浪人ではあるが、これでも守秘義務は守る所存。雇い主の名だけは明かすわけには参らん」
は?
支配の魔法、効いてない?
「いや。お主の力は充分にわかり申した。今も魂が絞られるような痛みを感じ、身を切られるような思いではあるが……、それでもだ。拙者の矜持は曲げられぬ。殺すなら殺すがいい。お主の力のせいか今拙者の身体は自由が効かぬ。自ら死を選ぶこともできぬ」
諦めのような、そんな顔。
反抗的な表情では無いものの。これはほんとかなり強い心の持ち主、なんだろうな。
それにしても、魔人ってこんなふうなのかな。それともこの人は後天的な魔人なのかな?
ちょっと調べてみたいかも。
「うーん。あんたを殺しちゃうっていうのはあんまりしたくないな。でもこのまま自警団とかに引き渡しても意味がないだろうし」
「プチっと行っちゃう?」
「もうデルタ。流石にそれはちょっとね」
「でもこいつも悪いやつでしょ?」
「そうかな? 本当に性根が悪いようにも見えないんだよね」
「あまあまだね。イリス」
はう。
「ふん。そんなこと言ってるとデルタも退治しちゃうんだから」
「はうあう。ごめんイリス。ボク、いい子でいるから。ひどいことしないで」
「もう。でもそういえばあんた魔王なんだから、この人魔人ならあんたの配下とかになるわけ?」
「うーん、魔人って言っても多分いろいろ? 魔王石のカケラを宿してる魔人ならボクの係累だけど、その辺の魔石を宿しただけの魔人はただののら魔人?」
「ほう。クマの御方は魔王様でござったか。拙者、家宝の龍玉、ドラゴンオプスニルをその身に宿しておりまする」
「はうあう。ドラゴンオプスニルって言ったらボクの係累。まちがいない?」
「この後に及んで魔王様を誑かそうとは致しませぬ。どうか魔王様、あなた様のお力でこの命絶っては下さらぬか」
はうー。
土下座をするようにデルタの前に首を差し出すその男。
デルタもさっきまでの勢いはなくて、ちょっと引き気味に彼をみてる。
「ねえ。あなた、アレクサンドロ・ハルノブ、だっけ。あなたを殺すって選択肢はあたし達にはないわ。それよりも……あなたデルタの係累なのよね? だったら雇い主との契約は終わらせてデルタの子分にならない?」
まあこれが最大限の譲歩。断られるようなら魔法で封印しちゃうとかするしかなくなるし。




