97.初手、どう攻めるか?
エソラレンタカーから遥さんのお家まで
車のナビによると10分だ。
まだ30分は時間がある。
俺はこの30分を運転練習の時間としていたのだ!
ぬかりないな、俺は!
右に曲がり、左に曲がり、
一時停止し、ウインカーを点灯させ
加速し、減速し、窓を開け
ラジオを操作し、ハンドルをカッコ良く持ち
馴染めない席の位置調整をしたり
コンビニに停車したり、発進したり
水族館の位置をナビに入力したり
あっと言う間に30分は過ぎていた!
急いで遥さんの住むコンクリート打ちっぱなしのアパートの前に停車し、降りる。
[ごっめーん!5分遅れる!]
遥さんから連絡が来る。
ななな、なんだ!?
この、かつてない、ドキドキは!?
俺は車に乗り、ミラーで鼻毛の確認とか
髪の毛の分け目とか、毛量とか毛のまとまり具合とか、体臭とか、色々気になり出した。
落ち着け、俺!
初手、どう攻めるか!?
(待った〜?)
(俺も今来たところさ)
(んも〜!貴方も遅刻じゃない〜!)
これでは、真摯さをアピール出来ない!
(待った〜?)
(10分前には来てました!)
(えーっ!?待たせてゴメン)
いやいや!これはこれで気を使わせるぞ!
(待った〜?)
(待ちくたびれましたよ〜!)
(ごっめーん!)
これが良いのか!?
冗談っぽい感じで!
これなら気を遣わせず、かつ、待ってたアピールは出来るぞ!俺!
[今出る!]
遥さんからメッセージが来た。
急いで俺は車を降りる。
初手は完璧だ!
出てこい!遥さん!
「お待たせ〜!」
少し髪の伸びた遥さんは
セミロングで外ハネで
芸能人みたいな感じで
メイクはいつもより濃いんだけど
なんというか、いつもより大人で
いや、いつも大人なんだけど
大人、というよりアダルティーという
カタカナが似合うような感じで
中はニットの何かしらを着ていて
それがありがたや、おっぱいを強調していて
それから、秋らしい薄手のコートを上から着て
まぁ、着ているというか、羽織っている感じで
そこからスラリとした脚がデニムを履いていて、軽くコツコツと音のする、ブーツみたいなブーツじゃないようなの履いていて
それはもう、普段見る遥さんの何倍も
素敵で、とてもとても綺麗だった。
いつもと違う、
とてもとても綺麗な遥さんに
言葉が出ない。
どうやら先手を打たれてしまった。




