93.ニット帽
「これなんか似合いそうだよね」
真琴が持ってきたのは暗めの赤のニット帽だった。
いやいやー、これは無いでしょ。
俺的には暗めと言えども赤色を身につけたく無かった。
なんとなく、派手だし。
「えー?これ?」
「いいから」
渡されたニット帽を被る。
「もうちょっと浅く被りなよ」
浅く被ってみる。
うん。やっぱり微妙!
「う〜ん・・・」
「モデルが微妙なのかなぁ〜?」
「俺の事言ってんのか?」
「アンタ以外いないでしょ」
なんだよ、これ。この会話。
「ちょっとサイズ大きくない?」
「こういうダボっとしたのもいいのよ」
「いやぁ、微妙〜」
「確かに足りないかもねー、身長」
「黙れデカ女」
こういう、会話。
「これなんてどう?」
「なんだよこれ」
「アメリカの国旗柄」
「おい、俺を使って大喜利をするな」
「ふふっ。着てみなよ」
楽しくて
「これはー?」
何も考えなくてよくて
「もう自分で決める!」
歯痒い感情。
「センスなし!」
この感情を表すのは難しい。
「買っちゃった・・・」
恋ではない、何か。
結局、無難な感じに落ち着いて
俺は真琴とアウトレットモールを離れる。
夕食の時間帯になっていたけど
それもそれで
辛くなるから
ここで解散する事にした。
「デート、上手くいくといいね」
「うーん」
「嫌なの?」
「嫌じゃないけどさ」
「告白しちゃえば?」
「なっ!1回目のデートで?」
「唐突な告白は、人を惑わせるんだよ」
「なんじゃそりゃ」
「それにしても、なんだか不満そうな、顔してるね」
うーん。
「今日みたいに、楽しい時間を過ごせる自信がない」
「なにそれ。じゃあね」
そこで別れた。
俺は10歩ぐらいあるいて、真琴に言い忘れてた事を思い出した。
「真琴」
「なに」
「今日はありがとう」
「うん。じゃあね」
アイシャドウが崩れていた。




