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86.ビンタ
それでもー
世界は破滅しなかった。
何も起きなかったといえばウソになる。
俺はユキちゃんにキスをした後
意識を取り戻し、
何も起こらないまま、ビンタを喰らい
恥ずかしくなって、というか、我に帰って
ズーマーに乗って逃げた。
バイトをバックれ、何も感情がなくなり、自宅の布団で夜を過ごした。鳴り止まない電話に嫌気がさしてスマホの電源を切った。
救済の魔女の声が聞こえぬまま
時計が0時を示した時
頭の中の出来事が逆再生される感覚に陥った。
その日のシーンが頭の中で逆再生される。
バックれて逃げた事、
ユキちゃんにビンタされた事、
ユキちゃんに無理やりキスをした事、
コンビニの駐輪場で待機した事、
意味もなくノートを書き写した事、
茂木がノートを貸してくれた事、
茂木が俺を心配していた事、
2日ぶりに大学に出向いた事、
巻き戻されていく。
頭の中で再生されていた、逆再生の映像が、次第に現実と重なっている。布団の中。同じ位置。
巻き戻ったのだ。時が。
夢なのかもしれない。
いや、夢に違いない。
不可解な出来事、が起きたのかもしれない。
どちらに転んだのかは、分からない。
それでもテレビをつければ、昨日見た深夜のバラエティ番組がそのまま放送されている。
日付を確認すれば、やはり1日前に戻っている。
巻き戻ったのか、これが夢なのか
俺には、その時、分からなかった。




