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86/140

86.ビンタ




それでもー



世界は破滅しなかった。





何も起きなかったといえばウソになる。


俺はユキちゃんにキスをした後

意識を取り戻し、

何も起こらないまま、ビンタを喰らい


恥ずかしくなって、というか、我に帰って

ズーマーに乗って逃げた。

バイトをバックれ、何も感情がなくなり、自宅の布団で夜を過ごした。鳴り止まない電話に嫌気がさしてスマホの電源を切った。



救済の魔女の声が聞こえぬまま

時計が0時を示した時

頭の中の出来事が逆再生される感覚に陥った。



その日のシーンが頭の中で逆再生される。



バックれて逃げた事、

ユキちゃんにビンタされた事、

ユキちゃんに無理やりキスをした事、

コンビニの駐輪場で待機した事、

意味もなくノートを書き写した事、

茂木がノートを貸してくれた事、

茂木が俺を心配していた事、

2日ぶりに大学に出向いた事、


巻き戻されていく。


頭の中で再生されていた、逆再生の映像が、次第に現実と重なっている。布団の中。同じ位置。





巻き戻ったのだ。時が。




夢なのかもしれない。

いや、夢に違いない。




不可解な出来事、が起きたのかもしれない。




どちらに転んだのかは、分からない。


それでもテレビをつければ、昨日見た深夜のバラエティ番組がそのまま放送されている。


日付を確認すれば、やはり1日前に戻っている。


巻き戻ったのか、これが夢なのか

俺には、その時、分からなかった。





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