80.車で3時間
金がないから、それだけの理由ではなかった。
何か、気持ちを吹き飛ばしたかった。
俺は実父、クソ男のいる住所に向かって、原付を飛ばしていた。
車で3時間。
公共交通機関で約2時間。
高速道路を使わず、そして低速な原付では8時間と予測が出た。
スマートフォンのナビを頼りに、俺は原付で国道をひたすらに走っていた。
エソラ興信事務所を出て、自宅で必要なものをリュックに入れて、そこからずっと走っている。今日に限っては、天気が良くて、我が相棒ズーマーも好調な走りを見せていた。
ただただ、国道を走る。
チェーン店の高い看板が、進行方向と並行にスクロールし、青空を横切る。信号が道路標識が、視界を横切り、速度を演出する。
とにかく、走り続けた。
気が付けば、クソ男のいる街の近くまで来ていて、その頃には20時を過ぎていた。
たまには良いかもしれない。
俺はネットカフェで一夜を過ごす事にした。
翌日も、走る。
疲れがあったのか、11時に起きて、そこから走り出す。
色々考える。
会ったらまず、なんて喋ろう。
ー貴方の息子です!
そう、名乗るべきなのだろうか?
それとも、他人のフリをすべきなのだろうか?
母さんを苦しませた事、詫びさせるべきなのだろうか?
俺はあのクソ男を殴れるのだろうか?
本当に父親なのだろうか?
母さんが新しい男と結婚しようとしている事、
伝えるべきなのだろうか?
俺を見て、何を思うのだろうか?
今、何をしているのだろうか?
何を、思っているのだろうか?
低速で駆け抜けて、遂に到着する。
このボロアパートか。
クソ男に似合う、クソアパートだな。
原付を止め、スマホで時計を確認する。
15時。
俺はついに、玄関のチャイムを押す。




