77.距離
【chapter.06】 キス (全13話)
10月ともなると、少し寒い。
寒いというか、暑さが抜けたような感じ。
半袖でも一向に構わないのだが、
大多数が集まる講義室では浮きたくない。
そういうわけでTシャツに7部袖のジャケットを羽織って登校。サークルやらなんやらで何度かキャンパスに行ってたけど、講義室は懐かしい。
夏休み明けの講義は学科全体のやつで、大教室に皆が集まる。遠くに愛生さんが見えた。後ろ姿も断然可愛い。10点。
この夏の2ヶ月で、愛生さんとの距離は急接近していた。
合宿免許で連絡先を手に入れ、免許センターでデートの約束をした。
距離!近づきすぎだろ!
しかし、ポンコツな俺は、デートの約束の話を出来ずにいた。というか、遥さんとのデートも保留のままだ。
だいたい、ここら辺がひとり語り。
「ずっと夏休みでいいよなぁ〜」
隣の茂木が語りかけてくる。
「だな」
「夏休みの間に勉強した事忘れたよ」
「俺もだ。夏休み中は狩屋の家のゲームの操作方法しか学んでない」
「またやろーぜ」
「だな」
恋愛とは違うが、茂木に加えて、狩屋という4点のクソダサ男とも友達になった。
最初はなんだコイツ?って思ってたけど、同じ釜の飯を食べて、仲良くなった。これも夏の進展だ。
こう見れば、順風満帆な大学生活なのだけど
俺はやらなきゃならないことがあったわけで。
魔女の正体。
それの種明かし。
それをやらなきゃ、話が進まないわけだ。
「なぁ、茂木」
「なに?」
「借りてた本、返すわ」
俺は茂木に借りていた〝カラマーゾフの兄弟〟を返す。
「どうだった?」
「難しかったな」
「次は〝罪と罰〟でも貸そうか?」
「いや、いい」
「あそう」
しかし、難しい本だった。
ー半分、血の繋がった兄弟。




