57.ポップコーン
正直キッツいな〜。
そんな臭いセリフが飛び交う恋愛映画だった。
夏休みという事もあるけど、公開からしばらく経っていたようで、シアター内は4割程度の人しかいなかった。
久しぶりの映画館で見る映画は、それでも楽しくて、予告編は面白そうな映画のオンパレードだった。
上映前に買ったポップコーンを食べきれるか心配で、それを言ったら遥さんは笑っていた。
着席してからポップコーンを夢中で食べてたけれど、映画が始まると、自分の食べてる音がうるさいんじゃないかって、気になった。
隣に遥さんがいるから。
口で溶かしながら食べる方法を編み出して、音を立てないようにポップコーンを食べた。左手で、食べていた。
映画は本当にありがちな、そんな恋愛映画で、見てるこっちが恥ずかしくなった。
遥さんはどう思って、観ているんだろう。
俺からすれば、この人は大人で、魅力的だ。そういう、大人の女性って、こういう恋愛映画、好きなのかな?
それでもやっぱり、女の子だから、好きなのかな?
そういったことばかりが、気になっていた訳なんだけど、段々とそうもいかなくなっていた。ポップコーンの油分のついた左手を拭きたい。でも、拭けない。それには理由があった。
キッカケがどうだったか、分からないんだけども・・・
俺と遥さんは手を繋いでいた。
俺の右手は、遥さんの左手が触れていた。
繋ぐ?って表現が的確かは分からないけど、俺の右手の上に遥さんの左手が乗っかっていて、優しく俺の手を握っていた。
俺はそれを拒否しなかった。
遥さんも緊張していたのか分からないけど、なんだか少し湿っていた。
それ以上に俺の手のひらは、汗だくだった。
キツくてありがちな恋愛映画の中身など
全くもって頭に入っていなかった。




