136.予定通り
年明け早々、俺は里山さんに会っていた。
いつものファミレスで、里山さんは予定通りに遅刻してきた。
「ほとぼりは、冷めたかい?」と里山さん。
「はい」と俺。
「ブログは、やめることにしたよ」
「え?」
「なんだか、“追いかけてきたもの”が、理想と違ったんだ」
・・・里山さんはずっと、魔女を追いかけてきた。
魔女ヶ崎という地名がある、ただそれだけでこの地に引っ越してきた
筋金入りの魔女好きだったはずだ。
オカルトブログを開設し、ゆくゆくは魔女伝説で一発当てる予定だったはずだ。
「悲しいことに、僕は主人公じゃなかった…魔女には何のゆかりもない、ただの追っかけ」
「そうですか・・・」
「どうして、君なんだって、恨んだけど、君も君の事情があった。それ以上、僕は意見できない」
確かにそうだった。
出来れば俺だって、こんな意味の分からないことに
巻き込まれてくなかったし、あのクソ男に思う事はたくさんある。
それでも、歩みを止めることはできない。
一度、世界を終わらせてしまおうかと、
そう考えたこともあったのだけれど
なんとなく、丸く収まっていたのだ。
妹は・・・よくわからないがアイドルを目指して
この土地を離れた。それによって、命の安全が
保証されたわけだし。
俺にはわからない宿命を背負った修道女達も
普通の女の子、ってやつに
戻れたのかもしれない・・・
「まあ、なんでしょう、大団円ってことで」
「ははっ、大団円ね。僕はフリーターになってしまったわけだけど」
いや、最初からフリーターだろうよ、アンタ。
里山さんはこの地を離れ、心機一転、また別の土地で
フリーターからはじめる人生のリスタートを切るようだ。
ある意味、この人も・・・魔女の被害者・・・いや
それは俺が考えることではない。
人生は、自分で決めなければならない。
こうして俺と里山さんが会うことはもう、無かった。
すべてが丸く、収まったのだ。




