128.語りきれない程の歴史
今度こそ、真実に辿り着いてしまった。
妹は、救済の魔女であり、破滅の魔女だった。
それを知ってしまった。
故に今、最悪の状況だ。
目の前にいるのは修道女の夏美さん。
夏美さんの手には、魔女を殺す毒入りの小瓶。
間に合ったのか・・・?
「ねぇ、どうする?」
どうしろって?
俺に聞くなよ。
俺だってもう、どうにもならないんだ。
真実にたどり着いたいま、俺が取るべき行動って?
答えは単純じゃないか。
「俺が妹に近づかなければ、もう、これ以上、何も起きる事はない。だから、見逃して欲しい」
もう、俺が近づかなければいい。
妹に。
「やっぱり、妹さんは悪さをする魔女だったんだ?」
「違う。でも、考えてみれば、昨日は妹と一緒にいた。妹は本当に、悪い事をする魔女なのかもしれない」
「だったら、殺さないと?」
夏美さんは真顔でそう言う。
「一体、妹になんの恨みがあるんだよ!」
「言ったでしょ。キミには、語りきれない程の歴史があるの。教えたって無駄だよ」
「でも、それは夏美さんの都合だ。人の命を奪っていい理由じゃない」
「ま、話は平行線ってワケだけど・・・」
その瞬間、夏美さんは、小瓶のフタを開く。
そして、中身の液体を、体育座りのその身体にめがけて、ふりかける。
ピシャッ
濡れる洋服。
「早いとこ、死んじゃいなよ」
何も、起こらない。
・・・間に合った。
「死なないよ」
俺は、夏美さんに言い放つ。
「もう、大丈夫だ、真琴」
顔を伏せ、体育座りから身体を起こす。
大きさがバレないように、体育座りをしてもらっていた。
ちょっと無理があったけれど、
ユキちゃんと真琴はすり替わってもらっていた。
意外と、分からないもんだな。
体育座りって。




