122.泳がせる
確かにそうだ。
俺がユキちゃんが救済の魔女だと知り得たのは
あの日、2回目の、コンビニで
無理矢理キスをした時だった。
考えてみれば、あれから救済の魔女の声は聞こえていない。
救済の魔女と話が出来る手がかりと言えば・・・
今はキスしかない。
で、でも
「出来ません」
さすがに、この場所という事や
シンプルに妹と分かっていて、
俺はキスを出来るほどの心意気を持っていない。
「でもそれじゃあ、手掛かりが掴めないわ」
それも分かっている。
とりあえず、この話に落とし所を作るのであれば、
とにかく俺は妹の安全を考え、導く必要があった。
「もうちょっと、様子を見てみましょう」
「私からすれば、泳がせるって事になるけど?」
「遥さん・・・まだ、妹の事を狙っているんですか?」
「ゼロじゃない。でも、ゼロ寄りになってる」
難しい。ゼロ寄り。0.1だとしても、結局のとこゼロじゃない。
「ゼロにしてくれないと、困ります。妹が安心して暮らせません」
「じゃあ、私は可能性をゼロにするから、貴方は何か差し出してよ」
えっ?
おかしくない?
「なっ・・・何を・・・金ですか?」
「その、あの、また、デートして欲しいの」
ユキちゃんの肘が俺の横っ腹に当たる。グイグイ。
正直考えてみれば恐ろしい人だけど、
女の子になりたいって言ってたし
これで丸く収まるかもしれない。
デートの約束と妹の安全を取り交わし、
その長い学園祭の日は終わりを告げた。




