12.ハードルの高い女
翌日。
大学生の一時限目は早い。
ズーマーを法定速度でぶっ放し
大学に到着する。
「おはよォ!」
相変わらずの冴えない男、茂木が現れる。
「よっ」
今日から俺たちの学科の基礎教育が
週2ペースで行われる。
大教室に皆が集まるから、
もちろん愛生さんもいるわけだ。
しかしまぁ、なんていうか
ハードルの高い女である。
大教室の中盤あたりの席に茂木と座って
授業が始まるまで雑談をする。
バイトやサークルの話、授業や教科書が高額な話
そんな会話のネタが尽きた頃、
教室に入ってきた愛生さんとその取り巻き女子
それらを遠目で見ながら、茂木に語りかける。
「なぁ、魔女っていると思う?」
「魔女?」
「バイト先の人が、この地域に魔女がいたとかなんとか」
バイト先の里山さん(42)の話は信憑性に
欠けるが、俺は昨日の奇妙な体験が
気になって仕方ない。
ただ、昨日の出来事を茂木に語っても
信じてもらえないだろうし、いや、
信じてくれるタイプの変な男だが、
それはそれで面倒なので、俺は多くを
語らないことにした。
「この街には、魔女ヶ崎って地名があるみたいだよ」
茂木が言う。あぁ、そういえばコイツ、
地理サークルとかいう不毛なサークルに入ったんだな
ここに来て役に立っているではないか。
「へぇ。魔女ヶ崎?」
「うん。行ってみるかい?」
「ちょっと気になるな」
「じゃあ、放課後行こうよ」
「ああ」
授業が始まる。
俺はスマートフォンで魔女ヶ崎について
調べてみた。
特段、伝説があるだとか、
何か事件があったとか、
そういう記載は無かった。
ま、行ってみれば分かるか。
しかしまぁ、俺は誰を好きになっちゃ
いけないんだ?
俺は黒板ではなく、愛生さんの
後ろ姿を見ていた。
まさか、ね。




