116.ミスト
うん・・・
アイドルは避けて通ってきた俺だが
アイドルの歌ってこう、なんか新鮮。
何より同級生が歌ってる事が驚きだ。
ラップのような感じで、捉えきれない単語の羅列がつらつらと彼女の口から流れ、
オープニング用の曲だったのか、
すぐに1曲目は終わった。
ユキちゃんが戻らぬまま、2曲目が始まる。
そのイントロが流れた瞬間。
ライブセットで用意した仕掛けが発動する。
水をうまくはじき飛ばしたりして、
それを、大きめの扇風機で飛ばしたりして
ライブ会場にはミストが噴き出した。
11月の末だけど、このミストはライブ会場の熱気を冷ますのには丁度いい・・・
俺も手を仰ぐようにその霧を浴びる。
あれ?
嘘だろ。
手が、赤い。
遥さんの言葉を思い出す。
ー〝魔女だけに反応する毒。貴方の手は、少しだけ赤みがかっていた。反応したのよ。リトマス紙のような物なの。真っ青になれば間違いなく魔女。人間なら無反応。鍵キーには試した事が無いけど、赤らんだ〟ー
もしかして、この霧は・・・魔女を殺す毒!?
どうして?
遥さんはいなかった。
いや、今はそれどころじゃない。
この霧を止めるのか?
声がかき消される程のライブ会場の轟音。
ユキちゃん!?
ユキちゃんが戻ってきたら、
この霧を、浴びてしまう!
俺はすぐに席を飛び出す。
人をかき分けて、ライブ会場を後にする。
遠くで、茂木とユキちゃんが小走りで会場に向かっている。
「だ!ダメだ!」
俺は2人に言う。俺に気がついたのか
2人が呑気に手を振っている。
「あの子?」
目の前に、遥さんが現れる。
いつの間に?どうして?
どうして・・・
仕組んだのかよ、遥さん・・・
「待って!待ってよ!」
遥さんはユキちゃん目掛けて走り出した。




