黒騎士団の襲撃
さて、洋平とノベルが川をしばらく下っているところで、洋平とスライムたちは気配察知に引っかかる存在を検知した。
"ああ、いよいよ現れたか。てか、何だこの数?めちゃくちゃ多い?"
少なくとも100名以上はいる。たった2名を追うのにこれほどの大人数で来るとは洋平も意外だった。それだけ確実に自分たちを仕留めたいということなのだろうか?と考えた。
(洋平様、注意してください。かなりの手練れです。)
スラ吉も緊張している。ここが川の真ん中ではなく、平地だったら確実に洋平達はやられているだろう。
"まぁ、とりあえずは様子見だな。簡単には川に飛び込んでは来ないはずだ。鎧や服を着たままで川に飛び込むなんて自殺行為だからな。それと、万が一にも泳いで俺たちのところまで迫ってきたら例のプランで頼む"
(((あいさいさー)))
さて、そうこうしているとあちらもこちらの存在に気付いたようだ。まぁ当然といえば当然。川の真ん中に巨大なグリーンスライムの塊が浮かびながら川を下っているのだ。怪しまないほうがおかしい。
すると、追っ手の連中の一人が大声で呼びかけてきた。
「おいお前たち!逃げられると思うなよ?私たちは王国の誉れである黒騎士団。無駄な抵抗はやめてさっさとこっちに来い!」
そう言い放ったのは黒い甲冑に身を包んだ銀髪の青年。そう、アルベルトだ。
洋平はアルベルトを見るが、無視することにした。あほかと。元の世界でいえば、逃げる犯罪者にたいして待てーといって追いかける警察のようなものか。それで立ち止まって警察のほうに向かう泥棒はいないっつーの。
「団長・・・あいつら投降する気ないみたいですね・・・」
「ぐぬぬぬぬ。ええい。追いかけろ。川幅が狭いところに差し掛かったら川に入って捕らえる!」
「はっ!」
そしてしばらくの間、川を行く洋平達と川岸の街道を走る黒騎士団の追いかけっこが続いた。
アルベルトは前方に川幅が20メートル程度に縮まっている個所を見つけた。川に飛び込み奴らを捕まえる場所としては最適だと彼は考えた。そして、ふと奴ら二人に目を向ければ、男のほうは王女の命令として第一優先に殺さざるを得ないが、女のほうはというと。
「なんとも美人な女ではないか!」
そう、体部分はスライムに覆われて分からないものの顔は見える。その顔はアルベルトにとってドストライクだった。
そして、それはほかの黒騎士団の団員も同じ考えのようだ。
「ほー」
「あれはうまそうだ」
「団長・・俺にも分け前を・・・」
と、必死に追いかけている割には不謹慎この上ない。アルベルトは卑下た笑みを浮かべ、舌なめずりしながら馬を進めた。
「あの男はさっさと殺して、あの女で仕事の疲れを癒すとするか!ああ、男はあえて生かして行為を見せつけるのもいいな。ふはは。」
そうこうしているうちに、黒騎士団の先頭は例の川幅が狭い地点に到達した。川に飛び込める位置にいるのは20名程度か。彼らは洋平達が近づいてくるのを今か今かと待ちわびていた。
そして洋平のほうも、彼らの魂胆を見抜いているのか冷静なままだ。勿論、対処は考えてある。だが、その洋平のプランを聞かされていないノベルはちょっと震えていた。
「よっ洋平さん~、このままではぁ、ちょっとまずい気がするのですがぁ?」
「なに、気にするな。これは想定済み。」
「ほっ、本当ですかぁ?」
「ああ、大体さ、あんな思そうな鎧着たままで川に飛び込むとか自殺行為でしょ。おそらく、俺たちに一番接近できるこの場所を狙ったんだろうけど----」
そして黒騎士団の20名ほどが一斉に川に飛び込んできた。
ざぶーん
だが
「ふごぅ?」
「がはっ?」
「はふっはふっ・・・うぷっ」
黒騎士団たちは次々と川の流れに飲まれていった。
「当たり前だ。川幅が狭いってことは、その分川底が深くなるし、なんたって川の流れが速いんだからな。というか、あいつら本当にこの国の騎士なのか??こんなの俺の世界の知識でも何でもないだろうに・・・」
「うふふ、黒騎士団といいましたかぁ。確か貴族の子息を中心とした騎士団ですねぇ。おそらく水辺の戦闘は経験があまりないのかと思いますぅ。」
ノベルも少し安心したようだ。
だが、流石に20名中数名は水難を押しのけて俺たちに迫ってきた。
だが
"じゃあ、スラ吉、例のプランで"
((((あいあいさー))))
スラ吉たちに命じたのは簡単なことだ。
迫ってきたやつらの顔、それも口と鼻に張り付け。
それだけだ。
ここが陸地ならば、スライムが顔に張り付こうものなら両腕でそれを阻止するだろう。だがあいにくここは水の中。連中は重い鎧をまとい、さらに武器を持ちながらも両腕を使って俺たちのところまで泳いできているのだ。魔法やスキルでちょっと強化したくらいじゃ大した足しにならない。ここにたどり着くだけでかなりの体力を消耗するだろう。
で、そんなところで息をふさがれたらどうなるか?
そんなの決まっている。パニックだ。そしてそのパニックの元凶に抗えるほどの力もない。水を掻く腕を止めれば沈むだけだし、仮にスライムから逃れられたとしても一度狂わせられた呼吸のリズムを水の中で元に戻すのは容易ではない。
「ぐぶぶぶぶ」
「がはっ、やべ、やべてぇ」
「おぼ、おぼれるぅ・・・」
近寄ってきた兵士はみな返り討ちにあい、川の流れに飲まれていった。




