ぶらり川下りの旅
洋平とノベルはスライムにくるまれてドナ川を下っている。
雪解け水で水量が増えているドナ川の流れは速く、かつ、スライムたちも慣れない手つき?で漕いでいるからかなり早いスピードで下っていく。
しかし、よくよく考えたらこの後のことをあまりノベルと相談していなかったことに洋平は気づく。異世界人の洋平にとって、この川をどこまで下ればロマンス王国から出られるのかわからないし、出られたとしてその地が安全かどうかも定かではない。
というわけで、危険ではあるが休憩がてら川岸で休憩することにした。
「ふぅぅ、よく眠れましたぁ」
ノベルは大きな伸びをする。牢獄では気づかなかった大きなぷよんとした胸が弾む。
ああ、そういえば、日の下でノベルを見るのはこれが初めてだったな、と気づく。無理もない。ここまでの道中?休む間もなかったし、一息ついたのは川の上。そしてそのまま眠ってしまったのだから。
しかし・・・
と、洋平はノベルを見る。この世界に来て知り合う女性は冒険者ギルドの受付のエミールさんについで二人目。エミールさんもなかなかの美人さんだと思ったが、それ以上だな・・・
しゃべり方こそすっとぼけたような口調で調子が狂うが、水色の長い髪にくりっとしたかわいらしい目、それに白くなめらかそうな肌。そして何と言っても・・・
ぽよん
あのお化けのような胸・・・一体何カップなのか??
おそらく司書の制服なのだろう。ブレザーのような胸の大きさが分かりづらい恰好にもかかわらず己の存在を主張してくる。ついつい視線が胸にむかっていると、ノベルから不思議そうな顔をされたので、ハッっと我に返った。
「あー、ノベル?こうやって日の当たるところで顔を合わせたのはこれが初めてだよな。改めて紹介するよ。俺は和田洋平。異世界人だ。」
ノベルも洋平に向き合い、挨拶を返す。
「初めましてぇ。私はノベル・フォンスキーと申しますぅ。助けていただいてありがとうございますぅ。」
洋平はうなづくと、話を切り出した。
「さて、あとどの程度川を下ればロマンス王国を抜けられるか、ノベルにはわかるかい?」
「さぁ~、あまり王都から出たことがありませんからねぇ~。ただ、王都から国境までは馬で3日ほどの距離だったと思いますぅ。多分、馬よりは早く進めていると思うので、あと1日くらい川を進めば、国境にたどり着けるかも?っていう感じですぅ」
「ふむ。なるほどなぁ。でも、その間追っ手は来るよなぁ。あの王女がこのまますんなり諦めるとは思えないからな。」
「ところで、洋平さんはどうして王女様に追われてるんですかぁ?」
「ああ、そういえばまだ話してなかったな。俺は魔王を倒すために異世界から召喚されたんだけど、どうもまだ魔王は現れていないらしく?そのことを王女の口から知っちゃったために命を狙われてる。きっと俺のクラスメイト・・・いや、俺と同じく召喚された勇者たちにこの情報が漏れるのを恐れてるんだと思う。」
「ふぇっ、ふぇぇぇぇぇ?知りませんでしたぁ。国中の人たちも、魔王が現れた~って信じてますからぁ。あぁ、そういわれてみれば、魔王が現れたといわれてはいるものの、特に何ともありませんでしたねぇ・・・」
あの王女、国民にまで嘘ついてたのか。というより、王国のどこまでの人間が本当のことを知っているのか気にいなるな。まさか王女しか知らないということはないだろうに。
と、そんなことを考えていたら・・・
ぐぅぅぅぅ
「ふぇっ?」
あ、ノベルのお腹が鳴った。確かに結構な時間何も食べてなかったから腹減ったな。
「そういえば、腹減ったな・・・」
「はいぃぃぃ・・・」
ノベルは恥ずかしそうに頷いた。
さてさて、しかし困った。当然食べ物何て持ってないしなぁ。目の前にあるのは大きな川だけ。ん?川?ということは魚がいるか?
というわけで、気配察知のスキルを発動。すると、まぁいるわいるわ・・・おそらく魚が。
魚の姿が見えれば口寄せできるんだろうが、あいにく相手は水中だ。ダメ元で気配察知に引っかかった奴を口寄せしてみようかと思い、試してみた。あ、気配が大きい奴だともしかしたら人を襲うようなやつかもしれないから、気配が小さ目のやつにしよう。
そして、対象に狙いを定め口寄せを発動。
結果は・・・・
パタパタ・・ぴちゃぴちゃ
俺の目の前に魚が飛び跳ねていた。
「おぉぉぉぉ!試してみるもんだな!成功!」
「ふぇぇ?洋平さん、どうやって魚を捕ったんですかぁ??」
ノベルは目を丸くして質問してきた。
「ああ、牢獄でも見せた口寄せってスキル知ってるだろ?それと気配察知スキルの組み合わせだよ。今までは目視で来た対象だけしか口寄せできないかなって思ってたんだけど、気配察知で認識した対象も口寄せできるみたいだな。こりゃ使える。」
「ふぇぇ!すごいですねぇ!優秀な漁師になれますよぉ?」
いや、ならんけどね・・・まぁ、職に困ったら考えてみよう。
というわけで、同じ要領で50匹ほど魚を捕まえた。なぜこんなにたくさんとらえたかというと・・・
"スライムのみんな、ここまでありがとう。お前たちも腹減っただろ?魚食べてくれ!"
((((((うぉぉぉぉぉぉ!洋平様万歳!))))))
"魚程度でそこまで喜ばなくても・・・"
(いえいえ、我々スライムではなかなか魚を捕まえることができず・・・魚を食すなど高嶺の花だったのですよ)
と、神妙に語るスラ吉。
まぁ、君たちじゃあ魚捕まえる前に川に流されるね。うん。
俺とノベルは2匹ずつだ。その辺にあった流木を生活魔法で適当に割って、細くして串を作った。魚に串を打ち、塩を振り・・・たいのはやまやまだが、塩はない。
あとは石を並べて枝を拾ってきて生活魔法で火をつける。うん、塩がない以外は完璧だ。
「魚がやけたぞ~」
「うわぁぁぁ?食べてもいいんですかぁ?」
「いいに決まってるだろ・・・さすがに女の子の前で自分だけ飯食うとかないわ~」
「うふふ。洋平さんはやさしいですねぇ」
「いや、普通じゃね?・・・」
というわけで、塩は効いていない焼き魚を二人食す。まぁ、やはりというか・・・物足りない感じはするが、食えないほどまずくもない。魚の脂のうまみは感じられるからまぁ良しとしよう。
「さて、ノベル。俺たちはこのままロマンス王国を出るけど、いいよな?」
「はいぃぃ。というより、もどったら殺されちゃいそうですぅ・・・」
「ノベルはどこか行く当てあるのか?」
「全くないですぅ・・・なので・・・洋平さんの側にいさせてくださいぃ。」
え?ということはこれからもずっと二人の旅は続くのか。
そんなことを言われると、健全な男としてはついついノベルの胸に目が行ってしまうのだが、いかんいかんと理性を振り絞って話を進める。
「わっ、わかった・・・ところで、川を下ってロマンス王国を抜けると、この川は次はどこに行きつくんだ?」
「確か、ナザレフという自由都市に出ますねぇ。かなり大きな町ですぅ。ロマンス王国と大森林に囲まれた、冒険と商業、そして亜人さんがいっぱいいるので有名ですねぇ。」
「亜人?ってなんだ?」
人がつくくらいだから、人類の一種なんだろうが、いまいちぴんとこないな。
「亜人というのは、ゴブリン、コボルト、オーク、オーガ、ドワーフ、エルフ、獣人といった、人族に近しい人種の総称ですぅ。」
「へぇ~。やっぱりこの世界にはそういう人種がいるんだなぁ。さすがファンタジー。まぁ、行きたいかどうかにかかわらず、そこ目指すしかなさそうだな。」
というわけで、飯を食い終えた俺たちは再び川を下り始めた。




