脱獄
脱獄の計画。
そんな大した計画じゃあない。単に独房から下水道まで行き、あとは水路を辿って川にたどり着ければいい、というそんな程度の計画だ。
むしろ、計画という言葉をつけるのをためらうほどの適当なもの。
だが、性向の確率を少しでも上げるべく、俺はスラ吉にとある指示をだした。
"スラ吉。可能な限り下水道から近いところに仲間を集めておいてくれるか?"
(へいっ!)
特に理由を聞かずにそそくさと便所から下水道に向かっていくスラ吉。お前は本当にいいやつだ。
既にノベルには計画の話はしてあるから、あとは時間になるまで待つだけだ。
ここの独房には独房部屋全体の入口に兵士が一人いるだけという、警備としてはザルであった。だから大きな音さえ立てなければ問題ないはず。
そして、定刻の0時がやってきた。
「さぁ、スラ吉、ノベル、始めるぞ?」
「はいぃ~」
(はいっ!)
ノベルは何とも気の抜けた声である。
「口寄せ」
俺はノベルを俺の独房部屋に口寄せした。おお、できるもんだな。
口寄せできなかったら土木魔法でもっと大きな穴をあけようと考えていたところだ。
「ほぇぇ。これが「口寄せ」ですかぁ。便利なスキルですねぇ。」
「まぁな。重宝してるよ。」
さて、次はトイレの穴の拡張作業。人が一人通れる程度の大きさに穴を広げる。
これも問題なくうまくいった。
「さて、あとは穴を伝って下水道に抜けるだけだ。それにしても・・・うっぷ・・・くせぇ・・・」
「そっ、そうですねぇ・・・あぁ、でも私も臭いかもぉ・・・」
まぁ、1週間風呂入ってないし、タオルで拭いたりもしてないからね。だけど女性が自分を臭いとか言わないのっ!って言ってやりたいが、無視する。
トイレの底はそのまま歩けるほどの通路で、そこをバチャバチャと歩いていくと下水道に到達した。
下水道はかなり立派で、幅5メートルはあるであろう通路であった。ただ、視界は最悪だ。汚水、汚物、油汚れ、それにゴキブリ?あとネズミ?いやもう、二度と見たくないというか目をつぶって歩きたい・・・というほどのひどいもの。
靴はもうだめだな。逃げきったら捨てよう。ズボンも・・・うん、だめかもしれない。いや、洗えば何とかなるかもしれないが、気分的に無理。
そうしてバチャバチャと20分ほど歩いただろうか。ついに俺たちは王都を流れる川までたどり着いた。
"スラ吉、仲間はどのあたりで待機しているんだ?あと、数は?"
(城壁を抜けた先です!集まったのは30匹ほどです!洋平様、足りますか?)
"十分だ。よくやったぞ、スラ吉!"
「しかし、洋平さん~。グリーンスライムを集めてどうするんですぅ?」
「それは彼らに会ってからのお楽しみってやつだよ。」
俺たちはもくもくと川の中を歩いていく。川は深いところもあれば浅いところもあるから、都度都度歩いたり泳いだり・・・という感じになったが、二人とも運よくちょっとした泳ぎはできるし、川の流れも速くない。そして、深夜だということで誰もいない。
そしてついに俺たちは城壁を通過した。




