【四】
整理券が配られていた事によって、特に混乱なども無くスムーズにハードとソフト両方を買う事が出来た。
家電量販店の店員が、自社のロゴが印刷された一番大きなサイズのレジ袋にVRGの箱と『G.O.U』のソフトパッケージを詰め、にこやかに『お買い上げありがとうございました!』と、店の前へと送り出された三人は、疲れた表情を朝八時過ぎの朝日に照らされていた。
「よし、これで寝れる」
柴田が今にも閉じかけようとしている目を擦りながら言うと、
「家に帰るまでが遠足だって小学生の頃に先生に言われたでしょ?」
確かに言われが、それが一体何なんだと思っていると、中道は続けて、
「わざわざ行列に並んでまで買ったという事実を忘れちゃいけないよ?徹夜して行列に並ばなきゃ買えない商品を持って電車に乗る訳だから、そこで眠りこけて、そのまま気付かずに誰かに盗まれちゃうことだってあるんだから」
「帰り際、四人組位に囲まれてVRG狩りとかにあったり?」
冗談で言い合っているのだが、それを本気で捉えてしまう人が今はいる。
「え!?」
二人の会話を聞いて、少し引いたように悲鳴染みた声を上げた吉岡。
「あ、いや冗談だからね?中道の話は真実半分嘘半分位で聞いてくれて良いから」
すぐに柴田がフォローを入れる。
「そんなオオカミ少年じゃないやい」
と、口を尖らせる中道だったが、
「無事にゲームを買えた訳なんだから、さっさと帰って皆で遊ぼうよ」
提案すると、
「いや、さっきも言ったけど、帰ったら一回寝るわ。徹夜の後にそのままぶっ続けでゲーム出来る程体力残って無いわ」
柴田の言葉に、「えー」と不満そうな言葉を漏らすが、
「私もゆっくり休んでからの方が良いと思います」
吉岡も柴田の意見に乗っかり、
「このままゲームして、そのまま眠ってしまっても困りますので」
そう言って笑っていた。
「よし、分かった。じゃあ、帰ってゆっくり休んで夕方位に集合しよう!多分、VRGに音声チャットの機能とかも付いてるとは思うんだけど、色々設定しないと使えないと思うし、そこら辺についてはまだ詳しく分からないから、最初はさっき交換した無料通話アプリで連絡取り合いましょう!」
こういう時、遊びに関しての事になると中道は頼りになる。
「分かった。起きたらとりあえず連絡する」
「今日知り合ったばかりなのに私まですいません」
深々と頭を下げる吉岡に、
「いやいや、二人よりも三人!三人寄れば文殊の知恵って言うからね」
キャリーバッグを転がしながら何度も頭を下げて帰って行く吉岡の後ろ姿を見送った後、
「よし、俺らも帰るか」
「やっとここまで来たって感じだね。楽しみだなー」
そう言って二人は駅まで行って別れ、電車の振動で何度も眠りに引き込まれそうなのを必死に耐え、自宅である1Kのアパートに到着した柴田は、部屋の中央に置かれた丸机の横に置かれている座布団の上に袋を置き、
「寝たい」
と、一言呟いて、
「その前に、シャワーくらい浴びるか」
眼鏡を外し、頭を掻いて更にボサボサになった髪の毛を手櫛で適当に整えながらお風呂場へと姿を消した。
一方の中道は、自宅に着くなり袋からVRGの箱を取り出して、
「えっと、説明書はどこかな?」
中から束になった冊子を取り出して、
「まず何をしなきゃいけないのー?」
鼻唄交じりでページを捲りながら、先程言っていた音声チャットの使い方や本体設定の細かい情報などに目を通す。その後に、頭に装着するヘッドギアと腕に取り付けるハンドバンドと言われている機械を取り出して、
「おぉ」
と、小さな歓声を上げる。そして、
「これで心拍とか測るって感じなのかな?」
ゲーム内に意識を奪われてしまう為、体調の変化やリアル世界で何かが起こっても反応し辛くなるという事に、しっかりと対応出来るようにこのような装置の装着が義務付けられている。
中道は、ギアをテーブルへと置くと、今度は『G.O.U』のパッケージを取り出して、
「いよいよだなあ」
と、嬉しそうに呟いた。




