↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
群雄割拠のアレとコレ  作者: 坂本杏也
サンドウィッチと温かいスープ
PR
6/296

【三】

「スープを貰ったお礼と言っては何ですけど、もし良ければサンドウィッチ食べます?」

 中道がスープを飲んでいる横で柴田がそう言った。

「サンドウィッチですか?」

 彼女が確認するように呟いたので、

「あ、お腹が減っていればって話なんで、興味が無ければ全然」

「いえ、いただきます。気合いを入れて準備をして来たんですけど、夕食を食べて来るを忘れてしまいしまして」

 恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべる彼女の隣には、気合いを入れた準備の片鱗が大きなキャリーバッグとなって鎮座していた。

 柴田は、手に持っていた紫色の風呂敷をゆっくりとほどき、二つ入った容器の片方を彼女に手渡す。

「ちゃんとお店で作って貰った物なんで、安心して食べてください」

 それを聞いた彼女はおしとやかに笑みを零して、

「いただきます」

 と、可愛らしく微笑んだ。

 彼女は一つ掴んで口へ運ぶと、

「美味しい」

 と、目を輝かせて言葉を零していた。

 何かをしている人間を見ると、自分も釣られてやりたくなってしまうタイプなのか、サンドウィッチを美味しそうに頬張る彼女を見て中道が、

「何か、俺もお腹減って来たかも」

 なんて、言っているので、

「もう一個あるから食べなさいよ」

 と、柴田は笑いながら返し、風呂敷の上に乗っている容器を彼に手渡した。


 しばらくすると、二人とも綺麗に完食をしたが、彼女は申し訳無さそうに、

「あまりに美味しかったものだから、すいません」

 と、平らげてしまった事に対して謝っていたが、そもそも夕食をしっかり取っているにも関わらず、今サンドウィッチを平らげてしまった中道が少しおかしいだけで、柴田はそんなにお腹が減っていなかった。だから、

「あ、夕飯しっかり食べてるんで気にしないでください」

 と、彼女をなだめた。

「それより、あなたもVRGを買う為に並んでるんですか?」

 こうやって知り合ったのも何かの縁だという事で、少し聞いてみると彼女は恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべながら、

「はい」

 と、頷くと、

「『G.O.U』っていうゲームが発売されるって言うのをインターネットのページで少しだけ見掛けまして、興味を持ったんですけど、既にゲーム機?本体?って言うんですかね?それが売り切れてるって言われてしまいまして諦めていたんですけど、今回の追加分なら当日でも買えるという話を聞いたので」

 彼女は時折、首を傾げるようなポーズを混ぜながら丁寧に説明してくれた。

 当然、それを聞いた柴田と中道はお互いの顔を見合わせる。それを見た彼女は、自分が何かおかしな事を言ってしまったのかと不安そうな表情をしているが、

「あの、俺達も『G.O.U』がやりたくて並んでるんですよ!」

 最初に中道が口を開いた。

「え、そうなんですか?」

 と、驚いたように声を上げる彼女に、

「こんな偶然ってあるんですねえ」

 嬉しそうに中道は続けた。

 つい先程、柴田の『この列に並んでいる人は皆『G.O.U』が目当てなのか?』という質問に対して、『似たようなゲームが結構出てるからね?絶対とは言えないけど、結構最近発売したソフトだから目当てな人は多いかもしれないね?』と、言っていた人間は一体どこへ行ってしまったのだろうか。

 柴田は、横目で中道を見るが、彼はそれに気付く事無く彼女との話に夢中になっている。その内容は、いつの間にか自己紹介に移っており、

「俺、中道要って言います。こっちは柴田光一」

 明らかについでの紹介だったが、彼女に向けて頭を下げる。

「あ、吉岡葵よしおかあおいって言います」

 彼女も柴田と同じように頭を下げた。


 再び、中道が口を開き、

「吉岡さんは、こういう並んで買い物するのには慣れてるの?」

「え?」

 不意の質問だったのか、彼女は驚いた表情をして、

「ほとんど経験は無いですね。どうしてですか?」

 質問の意図を不思議に思ったのか、中道に逆に質問を返した。

「あ、いや、さっきのスープとかキャリーバッグとかちゃんと準備してるからさ」

 吉岡は照れ笑いを浮かべながら、

「こういうバッグじゃないと持って返るの大変じゃないかな?って思ったんで」

 その言葉を聞いて、

「おい、俺達もそういうのがあった方が良かったんじゃないか?」

 と、柴田は中道に言う。

「大丈夫だって。女の子が一人でVRGを箱で持って帰るのは大変かもしれないけど、俺達男の子だから」

 そう言ってあっけらかんと笑っている。それに釣られる様にして吉岡も笑顔を零した。


 その後もゲームの話やくだらない世間話で盛り上がっていると、午前七時に店員さんが顔を出し、

「本日は開店を八時まで早めますので、あと一時間頑張って下さい」

 と、言いながら行列の前から順番に整理券を配り始めた。

 無事、三人の元にも整理券は配られたので、

「これって買えるって事だよね?」

 と、柴田が二人に確認すると、

「じゃなきゃ整理券渡さなくない?」

「ですよね?」

 と、返される。

 やっと手に入るんだという喜びが一気に体中を駆け巡ると同時にドッと疲れがやって来て、

「もう買ってさっさと帰って早く寝たい」

 そんな言葉が自然に口から零れてしまった。

「せっかくゲーム買うんだから、せめて、早く帰ってゲームやりたいな!って言って欲しかった」

 中道の絶妙なツッコミに後ろに並ぶ吉岡が楽しそうに笑っていた。



「それでは、VRGの追加当日分発売開始ですっ!」

17.04.17 誤字修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。